寸法取りは配管工の基本ですよね。
現場で配管寸法を取っていると、色んなシチュエーションに出くわすものです。
中には、こんなところの寸法はどうやって取ったらいんだ・・・?と悩んでしまうような特殊なケースも。
今回はそんな時に役立つであろう寸法取りのアイデアを8つと、プラスでその他のコツお伝えします。
全ネジ+水平器を使う
全ネジのような真っ直ぐで長さのあるものと水平器を使用することで、スケールだけでは測れないケースに対応できます。
例えば、スケールを手で押さえられないくらい高い位置や、ちょっと離れた位置までの高さを測る時などに有効な方法です。
以下の図は、天井配管で配管の芯と梁スリーブの芯を測る際に全ねじ+水平器を使用したケース。
そして床から出た配管面から障害物の天場までを測る際に垂木+水平器を使用したケースです。
全ネジは垂木などでも構いませんが、できれば「メッキの全ネジ+マグ付きの水平器」の組み合わせがおすすめ。
なぜなら、マグ付きの水平器がくっつけて使えるからです。
ただし、全ネジや垂木などが曲がっていないかを、事前に確認しておく必要がありますね。
2人で取る
2人での寸法取りは、単純ですがある意味最強の方法です。
距離があってもスケールのテープを2人で押さえられますから、サクサク寸法を取っていく事が出来ます。
1人はスケールを伸ばして測る担当で、もう1人はツメを押さえて言われた寸法をメモする担当にすると効率が良いです。
実際に測る際は、2人ともに配管ルートを把握しておきましょう。
どちらか1人でも把握できていないと、どこをどんな風に寸法取りしたいかが分からず、逆にその意思疎通に時間がかかってしまいますからね。
レーザーを使う
レーザーを使えば、ある地点の延長線を照射したり、地面のポイントを天井に出したりできますから、寸法取りに重宝します。
色んな種類があり値段もピンキリですが、墨出しや寸法取りと相性が良いのは、5つのラインが照射できるタイプ。
具体的には、「縦・横・水平・垂直・地墨ポイント」の5つです。
この5つの基準があれば、配管での墨出しや寸法取りで困ることはまずありません。
では実際に寸法取りでどのように利用するか、いくつか例をあげますね。
- ポインタ(またはクロスライン)を天井に照射し、任意の位置からポインタまでの距離を測る
- 水平線を利用し、スラブからの正確な高さや落差を測る
- 配管の通り沿いに垂直線を照射し、任意の位置からの距離を測る
- 垂直線を利用し、竪管貫通スラブのズレを測る
ざっとあげればこんな感じですが、本当に使い方は色々とありますので、現場で試してみてください。
ちなみに、おすすめのレーザーを以下の記事でレビューしていますので、まだ持っていない人や買い替えを検討している人はぜひ確認してみてください。
DVならではのワザ
主にDV継手(フネン継手)のDLとDTで使える方法です。
以下の絵を見てください。
※旭有機材の承認図より抜粋
DLとDTは飲み込みがほぼ管の側面まできていることが分かります。
つまり、スケールの先を管の側面に当てて寸法を測ることが出来るわけです。(手前まで配管されている場合に限ります。)
厳密な寸法だと若干長いので、3〜5㎜程度測った寸法からマイナスすると良いでしょう。
これまでの経験上、この測り方で全然違ったなどということはありません。
ちなみに管の外径(半径)が分かれば、管の側面に当てて測った値に半径を足すことで芯の位置が分かります。
こうすれば、芯の位置を見ることが難しくても計算することができますね。
→イラスト?
距離が長ければ分割して取る
一人で寸法取りをしている時に、天井配管で長さが2m以上あるような箇所の寸法を取ることは結構あります。
そんな時スケールのテープ部分て、ある程度伸ばすと重さに耐えきれなくなってパキンと折れてしまいますよね。
2mくらいまでなら普通に伸ばして寸法取り出来ても、それより長くなるとテープもしなってきてしまい限界があります。
そこで、何回かに分けて寸法が取れないかを検討してみて下さい。
例えば、2m測ってそこに墨を出しておき、そこから更に寸法を測るといったやり方。
もっと距離が長ければ、複数回に分ける事もあり得ます。
この時注意しなければならないのは、2mなどの墨出しはシビアに行うこと。
これがシビアでなければ、全体の寸法が平気で5㎜~10㎜くるってきてしまいますから。
また、寸法が長い時だけではなく、床や壁が段になっているようなケースでも同じです。
一旦その段の高さ(幅)を測り、そこからの寸法を加えるといったやり方ですね。
寸法が取りづらい箇所でも、分割すれば案外簡単だったりしますから、現場で応用してみてください。
余談ですが、同じスケールでもTAJIMA製のものはテープの作りが秀逸で、長い寸法も測りやすくなっていますよ。
シビアに測る時は100㎜切る
スラブ面に出ている通り芯や、壁に出ている腰墨を基準に寸法を測ることって、結構ありますよね。
その際、シビアに器具芯を出したりレーザーの照射基準をマークしたりするなら、スケールの目盛りを100㎜切ることをおすすめします。
なぜなら、テープのツメを墨に合わせようとすると、ツメが少し動くしツメ自体の厚みもあるし、更には墨にピッタリ密着させられずシビアでは無いから。
一言でいえば100㎜切った方が正確に測れるということです。
ただしこの方法を使った場合には、100㎜切っているという事をしっかりと意識しておかないと、寸法が100㎜長くなってしまいます。
よく寸法が100㎜ずれているという場面に出くわすことがありますが、単純な計算間違いを除けばおそらくはこの方法が原因でしょう。
斫りを待たずに貫通部の寸法を取る
マンションでもテナントビルでも、竪管はいくつかのフロア(場合によってはピットから屋上までの全フロア)を貫いています。
それで、配管を更新する工事の場合、先に寸法を測ることができれば先行して作業が進められますよね。
そこでカギになるのがスラブ貫通部の寸法をいかにして測るか。
スラブ貫通部は、古い建物だと図面が当てにならなかったり、スラブの厚みが外見では分からなかったりするので、撤去前に正確な値を出すのが難しいのです。
本来この寸法取りに関しては、貫通部を斫った後や撤去した後にやるのが基本です。
しかし実際の現場では斫りがタイミングよく終わることは稀ですし、あらかじめ寸法が取れれば加工担当を作って一気に加工することもできます。
そこで採る方法が、スラブに長キリで穴をあけて丸棒(全ねじ)を使って測るやり方。
具体的には以下のような手順です。
- 太さが10〜12㎜くらい×500㎜程度のキリを使用し、ハンマードリルで計測箇所のスラブを貫通する
※なるべく竪管に近づける - 上下階に分かれて基準を決める
下階が天井つらで押さえるなど - 丸棒(全ねじ)を貫通させて、基準に従って寸法を取る
丸棒の長さが決まっていますから基準を決めておけば正確に貫通部の寸法を測れるわけです。
全ネジでも良いのですが、やはりネジが切ってある分引っかかってしまい通しにくいですから、丸棒の方がベターです。
気をつけなければならないのは、ハンマードリルによる穴あけが音出し作業だということ。
なので、事前に許可を得てからにしてください。
躯体の精度が良ければ階高を使う(少しアバウト)
普通の建築物というのは正確な図面があり、ほとんどその通りに建てられていますから躯体も正確(なはず)です。
ということは、階高が分かればシャフト内の有効寸法を測ることでスラブ厚が分かることになります。
イラストでは階高からPS内の有効寸法を引くとスラブ厚が出ることが分かります。
ただ、この数値は自分達で階高を測ったりスラブ面が凸凹していたりが原因でどうしてもアバウトな数値になってしまいます。
ですから、シビアな配管が求められるケースでは、前章の穴をあけて丸棒を通す方法を採用しましょう。
補足1:スケールのツメのマグはあるべきか?
スケールのツメには大きく分けて、マグなしとマグ付きがあります。
つまり先端に磁石が付いているか否かです。(写真はマグ付き)
この点については好き嫌いが分かれるところなのですが、個人的にはマグ付きが良いと思います。
なぜなら、デッキ・金物・鉄管などの金属にツメがくっつくので、テープが安定して測りやすいから。
逆にマグなしの良いところは、先端に砂鉄や鉄粉、釘などが付かないことです。
マグ付きは、これらが付いているのに気が付かないで使っていると、平気で5〜10㎜くらいはずれてしまいます。
金額的にはマグ付きの方が少々高いようですね。
これらを総合してどちらが自分に合っているかを選択してみてください。できれば両方使ってみましょう。
補足2:メモの仕方
寸法をメモする際に特に決まったルールはないものの、工夫すべき点はあります。
状況に応じてやり方を選択してみてください。
段ボールにマジック
自分だけが分かるようにメモ帳にボールペンで書くのも良いですが、それだと非効率なケースもあります。
例えば、他人に寸法を渡して加工してもらう時や、他のメンバーにも確認して欲しい時など。
そんなケースでは、ある程度の大きさの段ボールを使用した方が良いでしょう。
段ボールは濡れるとアウトという欠点はあっても、どこの現場にも必ずあるものですし厚みもあり丈夫ですから、ちょっと踏んづけたくらいでは破れたりしません。
何よりもマジックで大きく書いておけば、見やすいです。
使用する段ボールは、フタとなる部分をカッターで切って使用すると使いやすい大きさかと思います。
リスト or アイソメ?
簡単な配管ルートなら、リストの形式で寸法を羅列すればよいと思います。
逆に複雑な配管ルートとなると、「アイソメ」を描いた方が断然分かり易いです。
メモを見ながら加工する際には、ただ単に管を切るだけではなく芯引きをしたり、継手を付けたりしなければなりませんから、アイソメがあれば一目瞭然。
ただ、分かり易いアイソメをささっと描くにはある程度センスが必要です。
あまりに凝ったアイソメを描こうとして逆に時間がかかってしまったり、大きな段ボールに情報を詰め過ぎて文字が小さくなって見にくい、なんて事にならないよう気を付けましょう。
今回のまとめノート
寸法取りは配管工にとって基本中の基本です。寸法を測らない日は無いと言っても過言ではありません。
そんな寸法取りをできるだけスムーズにするための、8つのアイデアとコツをまとめました。
日々の作業の参考にしていただけるとありがたいです。
では、良い配管工ライフを!
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