配管での床・壁への穴あけを極める![コンクリート・ボード・木・金属]

どんな配管も、壁や床を貫通する箇所が、必ずと言って良いほど存在するのではないでしょうか。

「壁貫通」「スラブ貫通」「区画貫通」などと言われる箇所ですね。

 

配管が貫通するということは、元々スリーブが入っていなければ、穴あけの必要があるということ。

特に改修工事では、配管のルートが既存配管と変わることも多いため、その分穴あけ作業も多く発生してきます。

 

そしてその対象となる壁・床の材質や厚さなどは実に様々ですよね。

そこで今回は、配管で発生する「穴あけ」に関して、材質ごとの特徴・コツ・注意点をまとめていきます。

 

配管で穴あけが発生するシーンとは?

そもそも配管で穴あけが必要になるのはどのような時でしょうか?

新築工事では、配管が貫通する箇所にはあらかじめスリーブを入れますから、基本的に自分で穴あけするケースは少ないです。

 

「スリーブ」とは?

スリーブは、配管や電気配線などを壁や床に通すための筒のこと。

これをあらかじめコンクリート打設の前に仕込んでおくことで、打設後は穴が開いている状態になるのです。

材質は金属・塩ビ・ボイド(紙)など様々です。

 

それが改修工事になると、穴あけのシーンが一気に増えます。

なぜなら、既存配管とはルートが変わることが多く、新たな壁貫通・床貫通が発生するからです。

 

インパクトドライバーやハンマードリルなどの電動工具を使って、いろんな材質に対し配管が通る穴をあけるわけですね。

衛生配管であれば、その太さは20〜150㎜くらいの範囲になると思います。

 

穴あけ用のキリ(ホルソー)を選ぶ

配管や器具付けに伴う穴あけについては、様々な材質に合ったホルソーを選択する必要があります

材質は、コンクリート・木・ボード・プラスチック・ステンレス・ホーロウ・軽天材・ALCなど、実に様々。

 

それらに対しどのような電動工具やキリ(ホルソー)を選定するかは非常に重要です。

なぜなら、選択を間違えると以下のような事態が起こるから。

 

  • 穴が小さすぎて配管が通らない
  • 穴が大きすぎて貫通処理に苦労する
  • 刃が焼けて使い物にならなくなる
  • 刃こぼれして使い物にならなくなる
  • 1箇所穴あけするのにものすごい時間がかかる

 

このようなことを避けるためにも、適切な道具を選択しましょう。

キリ(ホルソー)の説明は、各部材の章で詳しく説明しますね。

 

使用する工具

主に使用するのはインパクトドライバーやハンマードリルになりますが、それ以外にも使う工具はあります。

例えば、大口径が通るならホルソーでは対応できませんから、回し挽きやレシプロソーを使うことになるでしょう。

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それ以外にも、デッキや厚みのある鉄板ならサンダーを使うこともありますし、ジグソーや丸のこを使うこともあります。

いずれにしても、よほどの緊急時や道具が限られるケース以外は、最も簡単に穴あけできる工具を選ぶべきですね。

 

キリやホルソーの取付け部分

メインで使うインパクトドライバーやハンマードリルのビット取付け部分について説明しておきます。

大きく3種類に分かれます。

インパクト用六角
インパクト用

ハンマードリル用SDS
SDSビット

ドリルチャック
ドリルチャック用

また、六角⇒SDSの変換や六角⇒ドリルチャックなどのアダプターもあります。

 

ボード面への穴あけ

石膏ボードは柔らかく、通常の壁や天井なら厚みも25㎜程度なので、とても穴あけしやすい素材です

専用のホルソーはもちろん、木用・バイメタル・ALC用なども使用できます。

 

石膏という素材の性質上、とにかく粉がすごく出ますので、養生をしたり下部に人やものがないかをよく確認しましょう。

もちろん自分自身も粉塵を吸い込まないように、マスクをしてくださいね

 

それから、壁の場合以下の点に注意しておくと良いでしょう。

 

  • 区画壁や遮音壁は間に断熱材が入っている
    →ホルソーで巻き込まないように
  • コンセントやスイッチ付近には電気配線が通っている可能性が高い
    →位置をずらすか、勢いよく開けすぎない
  • 反対側はボード表面の紙が剥がれることがある
    →必要に応じて双方向からあける(素地仕上げの場合など)
  • 通常、300㎜または450㎜間隔で下地(スタッド)が入っている
    →できるだけぶつからない箇所に穴を開ける(下地キャッチャーなどを使用)
    ※下地ごと穴を開けるのは、面倒な上に強度が落ちるので原則として禁止です

 

下地と電気配線

 

ちなみにホルソーで開ける径は、最大でも150㎜程度だと思いますので、それよりも大きくなる場合は、レシプロソーや廻し引きを使いましょう。

 

その他のボード

現場で使われるボードといえば石膏ボードですが、それ以外の種類もあり得ます。

ここでは代表的なものをあげておきますね。

 

フレキシブルボード

このボードは少々厄介です。

なぜなら、原料にセメントが使用されているため、下手に開けようとすると、刃が焼けて使い物にならなくなることもあるから。

 

超硬やバイメタルホルソーでゆっくりと開けることがポイントとなります。

また、インパクトドライバーを使うと打撃の機能によって衝撃を与えますので、割れてしまうこともあります。

 

できればドリルドライバーかハンマードリルの「回転のみ」を使用した方が良いでしょう

 

パーチクルボード

パーチは木くずを固めたものですから、木と同じ要領で開けることが出来ます。

基本的には床の下地に使われることが多いので、床面に穴あけする際に遭遇することが多いです。

 

木材面への穴あけ

木材は燃える素材なので、新築工事で壁や天井材として使われることはほぼありません。

ですが、町場の工事や造作では広く使用されていますから、穴あけの機会も少なくないでしょう。

 

特に、マンションや戸建ての改修工事で、床下にポリ管を通すようなケースでは、1部屋で何箇所もあけるなんてことはよくあります。

厚みによって特徴がありますので、それぞれ説明していきますね。

 

ベニヤ

ベニヤであれば薄いので、穴をあけること自体は簡単です。本当に薄いものになればカッターでも切れますから。

ただし、クロスが貼ってある面の場合には、必ずクロス面側から開けないと、よじれて破れてしまう可能性があります

 

間仕切りなどは両側がクロス面の場合もありますので、面倒でも両側から開けた方が良いでしょう。

間仕切りにベニヤってことは、かなり稀ですけどね。笑

 

また、古いベニヤだとホルソーが木の繊維に引っかかってバラバラになってしまう事がありますので、その時はカッターで切った方が良いですよ。

ベニヤの場合は刃がギザギザになっている木工用を使うことをおすすめします。

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コンパネ

コンパネはベニヤよりも厚みがあるものの、さほど苦労なくあけることができるでしょう。

ホルソーが半分くらいまで入ったら逆側から開けると、開け口が綺麗に仕上がります。

 

自在キリの活用について

一般的にホルソーは径が決まっていますから、シビアにあけたい時に該当する大きさがないかもしれません。例えば45㎜であけたいのに49㎜しかないとか。

その点、自在キリだと好きな径で穴あけすることができます。木だけでなくボードにも使えますから、1つは持っておくと重宝しますよ。

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野縁・柱・下地など

厚みのある木材になってくるとパワーが要りますから、専用のウッディングコアを使用します。(超硬ホルソーでも可)

長さがありますので、かなりの厚みまで開けることが可能です。(場合によっては延長棒を使えば、コアの長さ以上の厚みも対応出来ます)

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あける際は結構な力を入れながらになりますので、もしボルトや鉄板、コンクリートなどにぶつかった場合には、すぐに止めてください。

でないと刃が使い物にならなくなってしまいます。クギやビスくらいであれば大丈夫です。

 

また、必ずまっすぐに力を入れるようにしないと、根元から簡単に折れてしまいますので、意識して作業しましょう。

そして穴あけに時間が掛かる分、コア自体も相当高温になりますので、穴あけ後の取り扱いには注意です。

 

木はコンクリート面と異なり、中に電気配線などが埋まっていることはなくても、間仕切りの中や根太の奥に何があるか分かりませんので、確認を怠らないことが大切です。

 

金属板への穴あけ

分厚い鋼材や鉄骨に自分で穴をあけるなんてことはあり得ませんが、金属に穴あけする機会は結構あります。

例えば、流しの水切り・軽量材・壁の下地に使われている鉄板・ホーローの器具・ステンレス製流しの床や背壁など。

 

それで、金属板に穴を開ける際には、インパクトドライバーのように打撃があるものではなく、ドリルドライバーやハンマードリルの「回転のみ」を使用した方が良いです

なぜなら、ホルソーは回転により素材を少しずつ削り取るので、硬い金属板に打撃を加えると刃にも素材にも余計なダメージを与えてしまうから。

 

とは言え、実際の現場ではインパクトドライバーを使わざるを得ないケースの方が多いかもしれません。

なので、出来るだけゆっくりと回転させ、削りカスが出ていることを確認しましょう。(高速回転だと刃が焼けるので注意です)

 

もし削りカスが出ておらず、切れている感覚がない時は、刃が切れなくなっている(材質が合っていない)、もしくは押す力が弱いなどが考えられます。

それ以外の注意点もまとめておきますね。

 

  • 削りカスは金属片ですから、飛び散らない様にしっかりと周辺を養生する
  • 自分自身にも害がない様に保護具の着用を徹底
    特に保護メガネは必須
  • 穴が開いた瞬間にくり抜かれる丸い部分とホルソーの刃は超熱い
    くれぐれも火傷に注意! ケーブルやポリ管は溶けてしまうこともあるので、付近にそういったものがないかも確認しておく

 

コンクリート面への穴あけ

コンクリートは硬く厚いことが多いため、穴あけは簡単ではありません。

新築工事ではスラブにスリーブを入れずに、コンクリートを打った後にコアあけする現場も多いです。

 

改修工事だと、配管ルートが変わることが多いですから、新たなルート上を穴あけするケースは非常に多いでしょう。

私の場合、改修工事では自分達で穴あけする事が多く、現場の状況に合わせて次の2つの方式のどちらか、または両方で行っています。

 

  1. 乾式:ハンマードリルなどに専用のホルソーを取付けて行う
  2. 湿式:水を使用する穴あけ専用の機械で行う

 

それぞれの特徴を理解した上で判断する事が重要ですので、順に説明しますね。※ここでは鉄筋を切断の可否については問いませんのでご了承ください。

 

乾式

乾式はハンマードリルに専用のホルソーを取付けて、アンカーの下穴あけと同じような要領で行います。

KIドリル※K.I. DRILL

 

乾式のメリット

  • ハンマードリルに専用のホルソーを取付けるだけという手軽さ
  • 細い径ならアンカーの下穴あけとほぼ変わらない施工性
  • 湿式の専用ホルソーに比べれば安価
    →もちろん単体で見れば高価
  • 鉄筋も切断することが可能(現実的なのは3分筋まで)
    →刃が焼けないようにCRCなどを使った方が良い

 

乾式のデメリット

  • コンクリートの粉塵がすごい
    →養生や保護具の着用が必須
  • 鉄筋は「回転のみ」にしないとすぐに刃こぼれする
    →なかなか進まない、粉が出てこないと感じたらすぐに鉄筋を疑う
  • 裏面がガッツリ崩れる可能性がある
    →露出箇所なら両側からあけるべき
  • 径が100㎜以上になると、ほぼあけられないと思った方がよい

 

穴あけ時の手順

乾式で穴あけする際には、いきなりあけるよりも以下のようにすると良いです。

  1. 鉄筋センサーなどでコンクリート内の障害物を確認(配管や電気配線)
  2. 該当箇所に長めのキリで芯のだけを貫通させる
  3. ホルソーをセットして穴あけスタート
  4. 20㎜くらい削れたら芯棒を取り外す
  5. 壁の中間を過ぎたら場合によっては裏側からあける

 

湿式

湿式は写真のような専用の機械を使用して穴あけする方式です。水を使いながら行うことから湿式と呼ばれています。

ダイヤモンドコア※石原機械工業

 

湿式のメリット

  • 真っすぐ綺麗な穴をあけることができる
    →ベースが確実にセットされている必要あり
  • 硬いコンクリートも鉄筋も容易にあけることができる
  • 粉塵が出ない
  • 乾式のように押す力は必要ない
  • 分厚い面もあけることができる
    →そもそもコア自体が長いのと延長アダプタも使用できることから
  • 100㎜以上の太い径でも難なくあけられる

 

湿式のデメリット

  • 取付けを含めて機械の使い方をマスターする必要がある
  • ベースがセットできない箇所にはあけられない
  • 水を使うためコンクリートの粉と水が混ざった“ノロ”が出る
  • パワーがあるため気付かぬうちに埋設物を切断してしまうことがある
  • 機械自体が高価

※湿式の機械の使い方については、それだけでかなりのボリュームになりますので、ここでは割愛させていただきます。

 

乾式、湿式どちらを採用するにしても騒音が大きいので、特にマンションの改修工事などの場合は、近隣住民への周知徹底を行ってください。

 

ALC面への穴あけ

建物によっては、外壁や間仕切りがALCパネルの場合があります。ヘーベル板と呼ばれることもありますね。

倉庫や工場、ショッピングモールなどのように、高層ではないけれど床面積が広く階高も高く間仕切りが少ない、というような建物に多いです。

 

断熱性が優れている上に加工が容易であるため、使い勝手が良いのでしょう。

厚みはほとんどの場合で100㎜です。というか私は100㎜以外見たことがありません。

ALCパネル※出典:ALC協会

 

ALCはコンクリートに比べると柔らかい材質ですから、コンクリートの章でご紹介したホルソーを使用しても良いですし、専用のものもあります。

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最初の写真のように、100㎜間隔などで鉄筋(2分程の柔らかいもの)が入っていますが、ホルソーでそのまま切断することができます

ただ、壁としての設置用に6㎜程度の厚みがある鋼材が内蔵されていることもあり、さすがにこれは切断することは厳しいです。(というより切断しないでください)

 

また、石膏ボードやコンクリートと同様に、穴あけ時の粉塵がかなり出ますので、養生やマスクの着用を徹底しましょう

 

捕捉:穴埋めと補修

ALCに関しては、配管貫通部の穴埋めや補修に専用のものを使用します。

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施工要領はドライモルタルなどと変わらず、水を加えて練るだけ。

モルタルに比べると若干パサつきを感じるかもしれませんので、バックアップ材や複数回に分けて埋めるなどの処置が必要かもしれません。

 

穴あけ時のコツや注意点

最後に穴あけ全体を通してのコツや注意点についてまとめておきます。

穴あけ時には確実に頭に入れておいていただきたい内容ですから、しっかりと確認をお願いしますね。

 

壁は両側からあける

ボードやコンクリートの章でもお伝えしましたが、壁面に1方向から穴あけすると、裏面がきたなくなってしまう可能性が高いです。

例えばボードの紙が大きく剥がれたり、コンクリートが大きく崩れ落ちたりするわけですね。

 

これを防ぐには、面倒でも両方向から穴あけするに尽きます。もし、工具が入らないなどやむを得ない場合はしょうがないですが・・・

以下のような場合には必ず両方向から穴あけしてください。

 

  • コンクリートがガッツリ崩れてはまずい場合
  • 石膏ボードの素地仕上げ
  • 裏がクロス面
  • 裏がタイル面

 

粉塵に注意する

湿式でコンクリートに穴あけする場合を除けば、100%何かしらの粉塵や削りカスが発生します。

つまり、養生を徹底することと、保護具を着用することは絶対です。

 

これに関しては私自身これまでに数々の苦い経験があります。

例えば、団地の部屋内で穴あけ時(コンクリート面)に粉塵が家具や床に付着してしまい掃除に超時間がかかったり、鉄板への穴あけ時に切粉が眼に入ってしまい眼科のお世話になったり。

 

養生と保護具、これだけはくれぐれも肝に銘じておいてください。

 

ハンマードリルの取扱い

最近のハンマードリルはパワーも強くなりましたから、その分穴あけもしやすくなりましたね。

ただ、実はハンマードリルの取扱いには本当に注意しないと、大怪我をすることがあります。

 

というのも、穴あけ時にはコンクリート内の鉄筋やボードの軽量下地などにホルソーが“くって”しまい、ホルソーではなく本体が回転してしまうことがあるのです。

これが何を意味するかというと、本体の回転によって手首を捻ったり、手や指を強打したりする可能性があるということ。

 

実際にこの現象が原因となり手や指を骨折したという事例が少なくありません。

特にコード式のハンマードリルはホルソーがくった時に「空回り」してくれませんから、注意してください。

 

まとめ

どんな建物でも、配管が壁・床・天井を貫通する箇所が必ず存在します。これは断言できます。

ということは、何かしらの穴あけ作業が必要になるということ。

 

穴あけ自体は配管の付随作業なので嫌う人も多いかもしれませんが、避けては通れないことです。

なので、今回ご紹介した内容を参考にぜひ穴あけを極めてくださいね。

 

では、良い配管工ライフを!

 

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