家の壁に何か(棚やタオル掛けなど)を取付ける時に、壁の素材に合わせてしっかりと取付けることができるでしょうか?
もし重たいものを乗せるような棚やトイレのペーパーホルダーなどになると、しっかりと確実に取付けなければなりませんよね。
そのためには“ビス(ネジ)を効かせる”必要があります。
ビスとネジは厳密には異なるものですが、ここでは同じと捉えていただいて構いません。この後はビスと表現します。
ビスが効いている状態とは、ビスが最後まで入ったところから空回りしないこと。
例えば家の壁は石膏ボードであることが多いですが、単純にボードにビスをねじ込もうとすると、スルスルと入っていき最後まで入っても、その後も永遠に回すことができます。
よく「ビスがバカになる」と言うのはこの状態です。こうなると、何もしっかりと取付けることはできません。
というわけで今回は、何かを壁に取付けるつまり、ビスをしっかりと効かせる方法をご紹介します。対象はコンクリート・木・ボードなど。
この記事を読んでいただければ、ご自宅の壁にしっかりと物を固定できるようになります。もちろん水回りの器具にも使えますから、ぜひご確認ください。
ビスの種類と「ビスが効く」という状態について
まず最初に、そもそもビスが効くとはどういった状態なのかを確認しておきます。
ビスはドライバーで時計回りに回すことで木やボードに入っていきます。コンクリートは硬いのでそのまま入りません。この点は後ほどお伝えします。
ビスを木やボードに入れていって、頭が壁面に当たると一旦止まります。
ここから更に軽い力で回ってしまうようではダメで、力強く回そうとしても回らない状態なら効いています。パワフルな男性でも回せないくらい。
もしドリルドライバーやインパクトドライバーを使う場合には以下を目安にしてください。
- ドリルドライバーはクラッチ機能により自動的に回らなくなります
- インパクトドライバーは、ガッガッと衝撃音が出ます
ビスの頭が壁面にピッタリとくっついているのが目安。
それ以上締めてしまうと頭が飛んだりナメってしまいますので注意。
壁の材質を確認する方法
もう一点、お伝えしておきたいこととして、「壁の材質を確認する方法」があります。
壁は通常、壁紙が貼られていたり、珪藻土が塗られていたりと、見た目では材質が分かりませんよね。
ここで壁紙を剥がしたり、塗り壁を削ぎ落としたりするわけにもいきませんから、ある程度推測してみるのです。
具体的には、まず手で壁をトントン叩きます。中が空洞のような音がすれば木かボードで、逆に中が詰まっているような音がして響かなければコンクリート。
次に木かボードかということになりますが、残念ながらこれを的確に予測するすべはありません。
ただ、後からご紹介する「下地キャッチャー」で針を通すタイプは、厚みのある木には針が通らないため分かるかもしれません。
判断基準としては、「元々何かを取付ける予定だった(建てる時に大工さんに伝えていた)壁以外はボード」という考え方で良いかと思います。
つまりは、ほとんどがボードということですね。
ビスの種類
ビスは熟練の職人さんでも全て把握するのは到底無理なほど、無数に種類があります。その中でも特に使うことが多い代表的なものをご紹介します。
ビスの長さにはたくさんの種類がありますが、よく使うのは20〜30㎜程度のものです。
もし厚みが薄い棚や収納の壁などに使う場合はもう少し短くしたり、逆に厚みがあるものを取付けるなら長くしたりといった調整を行いましょう。
木(もく)ビス
タオルかけや棚受けなどに付属してくるビスは木用になっています。
いわゆる普通のビスで、タッピングビスとも呼ばれます。
洗面所やフロなどの水場に取付けるものには、錆びないようにステンレス製が付属していることが多いですね。
自分で買う場合も水場はステンレス製が良いでしょう。
コーススレッド
木を扱う大工仕事に使う少し細身のビスです。
主に木同士を締結(くっつける)するのに使うため、ネジ部が半分になっている(半ネジタイプ)ものが主流です。
このタイプは価格もお手頃で、もちろん木工をするなら適しているのですが、モノの取付けに際しては全体がネジになっている「全ネジタイプ」を選びましょう。
なぜなら、壁にリモコン受けや棚受けなどを取付ける際には、全体がネジになっていないと最後まで締付けることができずにガバガバになってしまうからです。
先端がよりシャープで尖っていますので、後で説明する壁材の下地として使われている、軽鉄材をそのまま貫くこともできます。(あくまでも薄い軽鉄材の場合)
ノンプラグビス
コンクリートに下穴を開けておけば、プラグ(4章で説明)を使わずにそのまま打ち込める構造になっているビスです。
プラグを使う場合に比べて、その分の材料費が安く済み施工も簡単なので、現場でも使うことは多いです。
ドリルビス(テクスビス・鉄板ビス)
先端の形が特殊で、鉄板を貫いて打つことができます。壁の下地が軽鉄材(3章で説明)の時に便利です。
壁が鉄板ということはまずないとは思いますが、壁の下地に軽鉄材を使っていることは多いので、最初からそれが分かっているなら用意しておくことをおすすめします。
ビスの効かせ方 〜壁が木の場合
木は1番簡単です。単純にビスを入れていけばオーケー。
木はボードの代わりに下地(ビスを効かせるためのもの)として入れるくらいですから当然ですね。
ただ、木といってもさすがに4㎜以下の厚みになってくると、弱くなります。一般的には12.5㎜の板が貼ってあり、薄くても9㎜ですから問題ないはず。
もし、ベニヤのように薄い場合は、女性の力でもビスが回り続けてしまうと思います。とは言え、薄いベニヤの壁なんてほとんどあり得ませんから、気にする必要はないです。
ちなみに、壁材として木を使用するケースというのは、実はかなり特殊。
例えば、手すりやテレビラックなど負荷の大きなものを取付けたり、何も貼らずにあえて木目を見せるデザインとしたりする場合に下地として入れるケースがほとんどなのです。
ほとんどの壁は、次にご紹介する石膏ボードになります。
ビスの効かせ方 〜壁が石膏ボードの場合
ボードは一般家庭で最も多いケースだと思います。2章で説明した通り、意図的に木にしていない限りは壁はボードだからです。
この場合、強度が高い順に、「下地を探し、そこにビスを打つ」→「ボードアンカーを使う」となります。順に説明します。
下地を探す
壁の仕組みとして、ボードを貼るための下地という骨組みのようなものが存在します。
この下地が入っている箇所を壁紙の上から探していきます。その際に便利なのが「下地キャッチャー」で、大きく以下の3種類があります。
- 細い針を挿すタイプ
- 磁石を使うタイプ
- センサータイプ
1と2は、両機能がついた一つの製品になっていることが多いです。
また、3は簡易的なモノから業務用のモノまでたくさんの商品がありますが、自宅で使うなら簡易的なモノで十分。
センサーなので、壁針を挿したり磁石の反応を見なくても下地の位置を把握できます。
そして下地は、木かスタッド(軽鉄材)でできています。
木下地
軽鉄の下地
木の場合は前章で説明した、壁が木の場合と同じ。
一方、軽鉄(軽量や軽天ともいう)は薄い鉄板ですので、ビスを打つにはちょっとしたコツが要ります。
最近の建築物はほとんどが軽鉄を採用していますので、少し詳しく説明していきますね。2パターンありますので順に紹介します。
①下穴を開ける
よく使われるビスの太さは4㎜ですので、3㎜程度の鉄板用キリと呼ばれるドリルで、あらかじめ穴を開けておくのです。
キリは1本で買うより色々なサイズの入ったセットで買ってしまった方が実はお得ですよ。他の作業にも使えますしね。
ただし、穴を開けるには手動ではかなり厳しいので、ドリルドライバーやインパクトドライバーがあった方が良いです。(高い製品を無理に買う必要はありません)
また、下穴が大きすぎるとビスが効かなくなってしまうので注意しましょう。
②ドリルビス(テクスビス)を使う
冒頭で説明した、先端が軽鉄を貫けるような形状になっている、専用のビスを使います。専用と言っても特別高価なわけではなく、普通のビスと同じように売っています。
このビスは、下穴を開けることなくそのまま打ち込むことができるのです。
打つ時には少しコツが必要で、先端が軽鉄を貫くまでは真っ直ぐに結構な力で押していなければなりません。
ですので、いずれにしてもドリルドライバーやインパクトドライバーがあった方が良いですね。
ボードアンカーを使う
もし、下地が見つからない、またはどうしても下地が無い箇所にモノを取付けたい場合には、ボードアンカーを使うことができます。
これは、石膏ボードにあらかじめ入れておくことでビスを効かせることができる優れもの。
私が現場で色々と使ってきた中で、1番よく効くと感じたアリゲーターアンカーをご紹介しておきますね。スマートな形状で使いやすいです。
気を付けたいのは、あくまでもボードなので強度は限られるということ。
ペーパーホルダーやリモコンくらいの軽いものなら良いですが、洗面器や手すりなどは取付けられません。強い荷重がかかると、ボードアンカーごとひっこ抜けますから。
ビスの効かせ方 〜壁がコンクリートの場合
コンクリートにビスを打つのは、結構大変です。なぜなら、ハンマードリルという工具で下穴を開けなければならないから。(やり方は後ほどお伝えします)
下穴を開けることができれば、その先は次の2パターンに分かれます。
- ノンプラグビスを使う
- プラグとビスを使う
順に説明していきますね。
ノンプラグビスを使う
ノンプラグビスとは、この後に説明するプラグというものを使わなくても、下穴さえ開けてあればコンクリートに直接打てるビスです。(冒頭に写真があります)
このビスの良いところは、すぐにビスが打てるのでとにかく施工が簡単ということ。
ただし、何回も打ったり外したりしていると効かなくなってしまいます。たまに1回外しただけで効かなくなることも。
こうなると、ビスを新しいものに交換してもダメで、新たな箇所に下穴からやり直さなければなりません。
プラグとビスを使う
下穴として少し大きめの穴を開け、そこに樹脂性のプラグを入れて使います。入りにくいので、何か叩くもの(カナヅチなど)があると便利。
ビスのサイズごとにプラグのサイズが決まっており、ケースや取説に下穴径と合わせて記載してあるはずなので、購入前によく確認しましょう。
プラグを使う方法は、サイズの合うキリを用意したり、プラグをあらかじめ入れたりする手間がある反面、何度でもビスを抜き挿しできてしっかりと効くメリットがあります。
ですから、強度を出したいものや、外す可能性のあるものは、プラグの使用をお勧めします。
下穴の開けかた
ノンプラグビスを使うにしても、プラグを入れるにしても、コンクリート面に下穴を開ける必要があります。
そこで必要になるのが、ハンマードリルという電動工具。ハンマードリルはホームセンターやAmazonでも簡単に手に入りますが、電動ドリルドライバーなどと比べれば高額です。
それでも、バッテリー式ではなくコード式なら、プロが使ってもなんら遜色ないモノが20,000円かかりません。
また、プラグやビスに合わせた径の「キリ」は別売りなので、コンクリート用を買う必要があります。
ではものすごく大まかに、手順を簡単に説明しますね。
- キリに穴開けする深さをマジックでマーキング
- キリをハンマードリルにセットする
- コンクリート面に対して垂直にマーキングまで穴を開ける
要領としては以上なのですが、注意点として、かなりの粉塵が出るのでマスクをしたり、床をビニールで養生したりすると良いでしょう。
ハンマードリルの詳しい使い方については、以下の記事にまとめていますよ。
→ハンマードリルの使い方を徹底解説!現場でよく使うビットとキリ
ビスの効かせ方 〜その他の素材
最後に、少し特殊な素材のケースについて触れておきます。家の中を見渡してみると意外とあるケースですから、もし該当する場合は参考にしてください。
キッチンパネル
その名の通り、キッチンまわりによく貼ってある、つやつやとした質感のパネルです。
材質はメラミンやアルミ・ステンレスなどの金属で、そのままビスを打つことはできません(メラミンは打てますが割れる可能性あり)。
そこで、「壁が石膏ボードの場合」でお伝えした、下地が軽鉄の場合と同様に下穴を開けてからビスを打ちます。
細かい話をしますと、キッチンパネルが貼ってある壁の材質も関係してくるのですが、適切な径(大きすぎてガバガバはNG)で下穴を開ければ、キッチンパネルに効かせることができます。
タイル
タイルは100㎜角が多いです。ビスを打つ場合はタイルとタイルの間(目地という)が基本。
割れやすい素材なので、必ず下穴を開ける必要があります。
ただ、この下穴は“タイルをビスが貫通”するためのもので、タイルにビスを効かせることはできません。
つまり、タイルの下地(コンクリートや木)に効かせることになるのです。
タイルは厚いものだと8ミリくらいあり、非常に硬いケースもあるため、専用のキリ(特にダイヤモンドが有効)を用意することをおすすめします。
そして、ビスをあまりキツく締めすぎるとタイルが割れてしまう可能性がありますから、電動工具を使っていても最後は手で締めた方が良いでしょう。
今回のまとめノート
自分で水回りの作業や日曜大工をしていると、壁に何かを固定したくなることがあります。
例えば棚・ペーパーホルダー・リモコン・タオル掛け・鏡・テレビなどですね。
そんな時に1番確実かつ頑丈に取り付けられるのが、「ビスを打つ」こと。
ビスでの固定は壁の材質によって要領がかなり違ってきますから、今回はそのポイントをまとめました。
もちろん、全て覚えるのではなく、ご自宅の壁の材質に該当する部分を参考にしてくださいね。
コメントを残す