ねじ込み配管の芯引きは、DVやMDとは少し異なります。
何が異なるかというと、「完全に決まった数値を芯引きとできない」ということ。
なぜなら、配管がどのくらい継手に飲み込むかが、ねじ調整によって微妙に違ってくるからです。
そこで、ねじ込み配管の芯引きについては、少し見方を変えて、ねじの飲み込み具合に応じて芯引きの数値を調整するという作業が必要になってきます。
今回は、その具体的な流れをまとめます。
ねじ込み配管の前提
ねじ込み配管においては、何よりもまず重要な事に『ねじ調整』があります。
ねじ調整は1番最初に確実に行いましょう。
さて、ねじ込み配管に使用される継手ですが、用途によって、ざっと挙げただけでも以下のような種類があります。
- 白(黒)ガス管用 通称シロ(クロ)
- 管端防食継手 通称コア継手もしくはPQ
- 圧力配管(スケジュール管)用
- 埋設配管用管端防食継手
- ドレネジ継手
そして、それぞれにエルボやチーズなど、異形も含めるとすごい数になる事が分かると思います。
最初に押さえるべきは飲み込みの長さ
ねじ込み配管では、一体どの継手のどの数字を押さえておけば良いのでしょうか?
私が出した結論は「押さえるべきは飲み込みの数字である」という事です。継手のねじ部長さは、20A〜100Aまでは以下の表の通りです。
ねじ込んだ時に、この表の数値と一致するようにねじ調整することが理想ですが、実際にはそう簡単にはいかず必ずズレが発生します。
ですから、そのズレを考慮する必要があるのです。
実はねじ込みの継手というのは、芯引き表というものがほとんど存在しません。(以下のような“寸法表”はあります)
※日立金属 白ガス管用継手(エルボ)
その理由としては、ねじ調整やねじ込み加減によって微妙に実際の長さが変わってくること、狙った角度でねじ込みを止めなければならないことがあると思われます。
そして残念なことに、DV 継手のように異形のチーズに各エルボサイズの芯引きを適用したり出来ません。
ただ、エルボとチーズ(同径)が同じなのは救いです。
ちなみに管端防食継手は、芯からねじ部の端、つまり芯引きに相当する数値が載っている表もありますが、いずれにしても飲み込みの長さによる調整は必要です。
ねじ込み継手の芯引きを測る(寸法表を参考にしてもよい)
飲み込みの数字を踏まえた上で、実際の芯引きはどうすればよいのかと言うと、以下のように測ります。
スケールのツメを継手の一方の端に掛けて伸ばし、もう一方の芯までを測るのです。
分かりにくければ鉛筆などで墨を出しても構いません。
そしてその長さから、飲み込みの数字を引き算すると芯引きの数字となります。
もしすぐに飲み込みの数値が分からなければ、実寸で測りましょう。
スケールが入らない継手や小径は以下のように測れば概ね飲み込みの数字です。
写真は25㎜のPQ継手 飲込み長さが概ね最初の表の15㎜と一致している
結論としては「芯引きは実寸を測る」という事になります。
よく使うシロ(白ガス管用)やコア継手(PQ継手)のエルボくらいは数字を憶えておいても損はないと思います。
実際のねじ込み配管に際して
繰り返しになりますが、ねじ込み配管はきっちり芯引きをして加工しても、ねじ調整やねじ込み加減によって実際の寸法が微妙にずれたりします。
ですから、配管時には寸法を測りながら、あともう1周ねじ込めるとか、ねじがちょっと硬いから柔らかくしようなどの調整が必要となります。
正直なところ、理想的な調整が出来るようになるには、何度もねじ込みの経験を積むのが1番です。
加工しか行わない場合でも、現地で配管する人の状況まで考えられれば最高です。(例:現地は狭小箇所でかなりねじ込み辛い⇒加工時にねじがちょっと硬いと感じたら、現地ではもっと硬く感じる)
ねじ込み配管は新しい配管技術の進歩によってかなり少なくなってきましたが、まだまだ施工する機会はありますし無くなると言う事はないと思います。
ぜひ今後の作業の参考にして頂ければありがたいです。
ねじ込み配管に必携のパイプレンチ
ねじ込み配管と言えば、必須なのがパイプレンチですね。パイプレンチ無くしてねじ込みを行うことは不可能。
そこで最後に、私のこれまでの使用経験も踏まえ、オススメのパイプレンチをコーナーレンチとスタンダードなレンチ1つずつご紹介したいと思います。
MCC コーナーレンチアルミ白・エンビ被覆用DA350mm CWVDA350
自分で買う最初の一本にしたいのが、MCCの兼用コーナーレンチ(350㎜)です。アルミ製で約700gと軽く、白ガス管・塩ビ被覆管兼用で使うことができます。
つまり、VD管や管端防食継手(コア継手)など、幅広い管種の締め込みに適しているのです。
350㎜を選んだ理由は、対応パイプ径が15A~40Aまでと、ある程度小規模の集合住宅(給水・給湯配管)くらいまでなら、十分に対応できるからです。
実際の現場での使い心地は、ガス管・被覆管を問わず刃の食いつきが良く滑りにくいです。たとえ滑ったとしても、刃の溝が浅いため継手や管を深く傷つけることはありません。
刃が細かく溝が浅いという点については、ゴミが詰まりやすいので注意が必要です。(ゴミが詰まると滑りやすくなります)
MCC パイプレンチ アルミ白・エンビ被覆管用DA 350 PWVDA350 型
スタンダードな形のパイプレンチです。他のメーカーからもほとんど同様の商品が出ており、価格帯も同じですが、やはり兼用ということでMCCをお勧めします。
この形は”縦型”などとも呼ばれ、コーナーレンチとは異なる動作をしますから、合わせて持っておきたいところです。
対応パイプ径が350㎜でも50Aまでとコーナーレンチよりもワンサイズ大きく、更には最後まで閉じきることができるので、細物でもくわえることができます。コーナーレンチと比較すると、若干重たくなっています。
どちらもMCC製となってしまいましたが、特にMCCびいきな訳ではありません。
あくまでも兼用をお勧めしたいためですので、ほとんどガス管しか扱わないなどであれば、HIT製でもスーパーツール製でも問題ないですよ。
2点とも決して安くはありませんが、長いヤトイを入れて何度も強烈な力をかけるなど、よほどおかしな使い方をしなければ、かるく10年は使えますから、実際には安い買い物。
もちろん、現場に同じ物があるとか、先輩からお古をもらえそうなどという場合は、まずはそちらで試してみるのが良いですね。
「ねじゲージ」高すぎ!?
最後に、「ねじゲージ」についてご紹介しておきたいと思います。
ねじゲージは、その名の通り丁度いい硬さのねじを切るために使うゲージです。
旋盤で切ったねじに対して、ドーナツ状のゲージをねじ込んでいき、決められた位置でストップするかを確認します。
旋盤でのねじ切りに際しては、どうしても最適な硬さというのが分かりにくいのですが、このゲージを使えば簡単に“教科書通りの硬さ”に調整することができるわけです。
じゃあコレがあればねじ調整が楽だね!と考えるかもしれませんが、実はこのねじゲージ、クソ高いです。汗
15A・20A・25Aの3つセットでもこの価格で、更に50Aまでのセットだと10万円を超えます・・・100Aは単体で10万超えです。
これだけ高額なのは、非常に精密に作られていることと、そもそもの需要の少なさから仕方のないことなのだと思います。
現場によってはねじゲージを使わなければならない(さすがに監督が用意してくれる)ケースもありますし、どうしても適切なねじ硬さが分からない!という方は頼ってみても良いかもしれませんね。
新しい記事とても参考になりました!!お忙しいのにありがとうございます。暇な時にでも前にいったフランジのやつも是非よろしくお願いします!
確認頂きありがとうございます。フランジの記事も頑張ってまとめます!
[…] 押さえておきたい継手の芯引き ねじ込み編 […]
[…] 押さえておきたい芯引き ねじ込み編 […]
[…] 押さえておきたい芯引き ねじ込み編 3 comments […]
A round of applause for your article post.Much thanks again. Really Cool.
[…] 押さえておきたい芯引き ねじ込み編 […]