このページを読めば、トイレの便器交換で外すときに困ることはありません。
長年の配管工経験から断言しますが、便器交換で困る(トラブルが発生する)のは90%は便器を外す時。
なぜなら、劣化によってボルトやビスが使えなかったり、思いもよらない箇所が固定されていたりしますし、そもそも外す人は取付を行った人ではないからです。
また、外した便器を取付ける際には、逆の手順で進めれば良いですし必要な部品も分かっています。
新しい便器を取付ける場合に至っては、丁寧な取扱説明書が付属していますから、時間をかければ素人でも取付られるくらい。
というわけで今回は、トイレの便器交換について便器を外す全手順やトラブル解決についてまとめます。
トイレの便器交換時に用意する道具
あった方が良いもの
あった方が良いもの、と言うより個人的には絶対に用意してください! とお伝えしておきたい道具になります。
- インパクトドライバー
あるとビスを外す作業が断然早いです。なければ普通のドライバーでもオーケー。 - カッターナイフ
ビスのキャップが取れにくかったり、便器と床の間にコーキングが回っている場合に使用します。 - プライヤー
ナットを外す時に、他の部分が供回りしてしまう場合などに押さえます。 - 10㎜のナットを締められる工具
便器を固定しているビスは多くの場合、頭が10㎜の六角になっていますので、プラス部分がなめた時などに使用します。 - バンドラチェット
10㎜のナットを締められますし、タンクや本体に使われているビスが12㎜の6角になっていることも多いので、重宝します。 - 化粧キャップ
止水栓が効いていない場合に使用します。以前にご紹介したものになります。
場合によっては必要となるもの
状況によって必要なものとしましたが、すごく特殊なものではありませんから、一緒に揃えてしまった方が良いかもしれません。
便器を外すステップ1 〜ウォシュレットを外す
本体を外すにはまずウォシュレットを外す必要がありますので、そちらの手順からです。(普通便座の場合はこの手順は省略です)
事前確認
- 電源コードは抜いておく。
※動作確認後 - 問題なく動作することを確認する。
もし動かなければ、お客さんに確認を取っておきましょう。最初から電源コードが抜けている場合についても、お客さんに確認をとっておいた方が無難です。
止水栓との接続を外す
ウォシュレットが付いている場合は、止水栓に必ず分岐金物が接続されています。
最初にその接続部分を外します。止水栓を確実に閉め、水が出ないことを確認してください。
袋ナットになっているので、モンキーレンチなどで回して外しましょう。
パッキンをなくさないように注意してください。
便器本体から外す
ウォシュレットは便器本体に取り付けられたベースにはまっているだけです。脇にあるボタンを押して手前に引けば簡単に外すことが出来ます。
外したウォシュレットは、養生をしてホースの接続部を傷めないように気を付けて置いておきましょう。
ちなみに、古いタイプだと便座にナットで固定されているケースがありますが、ナットを緩めれば問題なく外すことができるはずです。
便器を外すステップ2 〜ロータンクを外す
オーソドックスなタイプのトイレは、水を溜めるタンクであるロータンクが取付られています。
本体の前にロータンクから外しましょう。(タンクレス便器の場合、この手順は省略できます。)
止水栓を完全に閉めます(ウォシュレットを外した場合は済)
ロータンクに給水されている配管の途中には止水栓が付いており、閉めることで給水を止めることができます。
蛇口タイプはひねるだけですが、マイナスのタイプはドライバーで回します。古いととても固いことがありますので注意が必要。その場合にはプライヤーで摘みながら回すなどして対応します。
水を流します
レバーを操作して水を流します。
ポイントは水が流れきるまでレバーを上げっぱなしにしておくことです。この時に新たに水が給水されないことを確認します。※止水栓が効いているかの確認です。
フタを外します
上に乗っているフタを外します。
手洗いがあるタイプは、フタと給水のホースがねじ込みになっていることがありますので、強引に引っ張らないよう注意しましょう。※手で接続部のナットを回せば取れます。
止水栓側・タンク側の袋ナットを外します
モンキーレンチを使って、止水栓とロータンクとを繋いでいる管(ホース)の袋ナットを外します。
この時に、タンクの中の金具が一緒に回ってしまわないように注意しましょう。
金具を手やプライヤーで押さえながらナットを回すと良いでしょう。
※一緒に回ってしまうと、復旧して流した時に水が止まらなくなることがあります。
本体に固定されている部分のナットを外します
ロータンクと本体とは、ナットで2点固定されています。古いタイプは金属製が多く、大体が12㎜ですが、新しいものは樹脂製が多く、手だけで緩められます。
タンクを垂直に持ち上げ、残っている水を便器本体に流します
まずタンクを覗いて水が残っている場合は、タンクを垂直に持ちあげてから、残っている水を便器に流します。
ここで完全に水を流しておかないと、置いた時に水浸しに・・・くれぐれも落とさないように注意してください!
タンクを置き、部品などを確認します
養生材の上に背中側を下にして置き、外したナットなどがなくなっていないかを確認します。
タンク下部のナットが緩んでいることが多いので、増し締めしておきます。(手で外せるタイプは関係ないです)
便器を外すステップ3 〜便器本体を外す
最後に便器の本体を外す手順になります。
手順通りにやれば外せますが、本体は重たくて滑りやすいので運ぶ時に十分注意しましょう。
溜まっている水を抜く
シュポコン(灯油ポンプ)を使用してバケツに水を吸い出します。
シュポコンがなければウエスやペットシートで吸って絞ってするしかありません・・・
全て吸い出す事はできませんが、可能な限り最後まで吸い出しておくと、運ぶ際に水が垂れるのを最小限にできますよ。
ビスのフタを取ってビスを外す
前止め、床固定のビスのフタを取ります。どのようなタイプでもカッターやマイナスドライバーを使えば簡単に取れます。
ただし、稀に取れにくい場合があり、強引にやりすぎると壊れてしまう事もあるので注意しましょう。
特に前止のフタはビスの溝に小さなぽっちが入っているだけですので、その部分が折れるとどうしようもなくなります。
前止のフタ
フタが取れたらビスを外します。ビスの頭は大体がプラスの3番(13㎜の六角)です。
便器を排便管から外す
排水は以下のように、床下に流すタイプ(S)と、壁側に流すタイプ(P)があり、持ち上げるか引き抜くかすれば外れます。
Pタイプでは実管とジャバラとに分かれ、ジャバラの場合はバンドを緩めて外します。
参考:【トイレ排水の2タイプ】壁排水・床排水の違いや仕組みを徹底解説!
※ジャバラは便器側ではなく配管側の方が外しやすいです。
外れたら、床養生した場所へ落とさないように気を付けて運びます。
前止めを外す
床止めビスと同様に、プラスの3番がほとんどです。
取付けることを考えて、壁や巾木からの位置を測ってメモしておきましょう。
メーカーによって形が異なりますが、ビスの位置を確認しておけば特に問題ありません。前止めがない便器の場合、この手順は省略です。
ビス類の確認と配管の養生
ビスやフタはなくさないようにまとめて便器の側に置いておきましょう。最後に配管側の管口をテープなどで養生しておきます。結構厳重に養生しないと、臭気が上がってきてしまいますので。
以上が便器を外す手順となります。
便器交換のトラブル解決
便器を外す際には、手順通り行えば通常は何の問題もなく完了するはずですが、時にはトラブルが発生し一筋縄ではいかないケースもあるもの。
私もこれまでに数々のトラブルを経験しました。今回は、その中でも遭遇することの多い4つの例をあげて、対応策をお伝えします。
本体のビスが外れない
ビスの頭がなめてしまったり、サビでボロボロになってしまって外せないことがあります。
便器を交換する場合は、結局捨てることになりますから、ハンマーで割ってしまってから取っても良いです。
どうにかして外さなければならないなら、サンダーで注意深くビスの頭を切るのがベスト。陶器をなるべく傷つけないようにするため、とても難易度は高いです。
本体がどいてしまえば、後はプライヤーなどでグリグリやればビスは取れます。
※取り付けのことを考慮して、新しいビスを用意しておきましょう。
また、角付きのロータンク(壁の角に付いている三角のロータンク)のビスも、外れない場合には同様の対応が可能です。
もしサンダーが無い場合には、手動の鉄ノコで地道に頭を切るか、ナメたビス外しを使ってみてください。
ロータンクと本体を接続しているナットが取れない
ロータンクのビスとナットが供回りしている状態です。この場合ロータンクを上から覗いて、ビスの頭が見えるのであればドライバーで押さえながらナットを回しましょう。
もしオーバーフロー管などでビスの頭が見えない時は、強行手段ですがタンクが本体に付いたまま外すという手があります。
※運ぶのが大変になりますので注意が必要です。
止水栓が効いてない
止水栓は最初に閉めておくことで、給水を止めて接続部を外しても水が出てこないようにできます。
参考:どこの家庭にも必ずある「止水栓」の場所や種類と重要な役割とは?
ただ、止水栓は必ずしも効くとは限らないと思っておいた方が良いでしょう。
特に古い止水栓になるとゴミが挟まっていたり、サビや汚れでスピンドルがうまく回らなかったりします。
漏れる量が少しなら道具の部分で説明したキャップナットをササッと取付けてしまえばオーケー。
結構な量の漏れなら、バケツなどで受けながらキャップナットを取付けても良いですが、いっそのことメーターから水を止めて止水栓を交換しましょう。
排水管と接続している蛇腹が取れない
壁側に排水するタイプで、配管と便器の接続が蛇腹になっていることがあります。
この蛇腹は、長期間使用していると、硬化してしまって外れなくなることがあるのです。
その場合、まず便器側でなく配管側を外そうとしてみて、駄目であればトーチランプで少し炙るという手があります。
※くれぐれも可燃物、炙りすぎに注意です。
どうしても外れない場合には、潔く蛇腹を切りましょう。(新しい蛇腹を用意する必要があります)
まとめてみると、止水栓以外は最終的にビスや蛇腹が使えなくなる可能性もあることが分かります。
ですので、改修工事で便器を外す件数が多い場合などは、新しいものを予め用意しておいた方が無難ですよ。
そんなに高額なものでもないですし、もしその現場で使わなくても他にまわせますので。
便器外しの特殊ケース
ここからは便器外しの特殊ケースということで、少し特殊なケースについて6つの例をあげて、それらの対策をお伝えしていきます。
オーソドックスな便器の外し方では対応できないと思った場合には、ぜひ確認してみてください。
止水栓が特殊なケース
便器を外す際に止水栓を必ず閉めますが、中には蛇口の部分が特殊で外すと水が止められない分岐水栓があります。(蛇口の部分を外してそこに分岐金物が取り付けられているようなケース)
そのような構造のものがあるのか? と思いますが、実際に現場でも50件に1件くらいは遭遇します。
この場合、蛇口部分を外すことになりますので、最初に水をメーターから止めておいた方が良いでしょう。
更に、便器を外した後に水を生かすためには道具の部分でご紹介した「キャップナット」を使用しますが、止水栓の蛇口部分が外れてしまっているため、メッキ管から止水栓自体を外してからキャップナットを取り付けます。
タンク一体型便器
ロータンク部分とウォシュレットが一体になっているタイプの便器です。
通常のロータンクは本体に2点固定されていますが、このタイプはほとんどが4点固定されています。
注意点としては、まず大きいので運ぶ際に気を付けることと、最初に流しても水がタンク内に残る場合が多いので、全ての水を捨てないと床に置いたときに水浸しになってしまうことです。
大概のものは蓋を外して水を捨てるか、水抜きのレバーを引くことですべての水を捨てることが出来ます。
前止めならぬ横止めがあるケース
便器の本体を外す手順にも出てきた前止めですが、中には横止めが両サイドに付いてるものもあります。
要領は前止めと変わりませんが、外す際に位置を正確に測っておかないと取り付けの際に苦労します。
ウォシュレットのホースがなまし管
最近はあまり見なくなりましたが、ウォシュレットの接続がなまし管と呼ばれる柔らかい実管のケースがあります。
この扱いには注意が必要です。もちろん折れる危険もありますが、それよりも管とウォシュレット本体との接続部分が壊れると、同じ部品がもう手に入らないことが多いのです。
部品がなければ、ウォシュレット交換になってしまいますから、外した後に運ぶ時や床に置く時には細心の注意をはらいましょう。
タンクビルトイン型
これはある意味1番厄介かもしれません。ロータンクの部分が作りつけの棚などになっており、その中にロータンクが隠蔽されています。
棚の部分さえ取り外すことが出来ればロータンク部分は普通のものが多いです。
どうしても外さなければならない時は、復旧のことを考えつつ試行錯誤しながら外していくことになります。
導入事例が少なく、ものによって手順がバラバラなので、時間をかけるしかありません。もし現場に大工さんがいる場合には、無理せず協力してもらいましょう。
リモデルタイプ
便器本体と排水管とを接続する「フランジ」と呼ばれる金物が別になっており、このフランジの取り付け方によって、便器の壁からの離れなどを調整できます。
目盛が付いている部分の管の長さを調節することで、便器の前後の位置を変えられるのです。
つまり、便器を外す際には本体を外した後に、このフランジまで外すことで全ての手順が完了します。
以上で大体のものは網羅していると思います。もし現場で遭遇した際には参考にしてください。
まとめ
トイレの便器交換は配管工であれば避けては通れないですし、素人の方でも自分でやるケースもあるでしょう。
便器交換は取付よりも外す方が何倍も難しいものですから、この記事がきっと参考になるはずです。
困った時に見る参考書的な位置付けとしてぜひ活用してくださいね。
では、良い配管工ライフを!
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