満水テストといえば、排水配管に関して代表的かつ確実なテスト方法です。では満水テストで漏水よりも何よりもあってはならないこととはなんでしょうか?
今回ご紹介する内容は、色々な条件が重なり、普通では考えられないような大惨事になった事例です。この時ばかりは、私も現場でかなり慌てました。
正直なところ、公にするのが恥ずかしいくらいのことですが、万が一にも同じような惨事が起こらないよう、このページで経緯をまとめたいと思います。
1.あってはならない事故とは
配管工たるもの、一番やりたくないミスといえば「漏水」だと思います。ただ、給水でも排水でもテストをかけることにより事前に漏水箇所を潰せますから、その後大惨事になる可能性というのは限りなく低いです。
つまり、テストというのは、施工確認の他に、工事後に面倒なことにならないようにする目的もあるわけです。今回はそのテストが大惨事を招いたのですから、とても皮肉な話です。
というわけで、前置きが長くなってしまって申し訳ないのですが、実際に何が起こったのかいいますと、「上階で水を流されテスト階が水浸しになった」ということです。この水浸しというのはちょっとやそっとのことではなく、流されたであろう水の量といえば、10立米くらいの水槽の水を全て抜いたくらいの量でした。
2.重なってしまった悪条件
大惨事といっても、そこまで騒ぎ立てるほどのことではないのでは? 水かきして送風機で乾かせば大丈夫でしょ! と思う方もいるかもしれません。
一般的な工程通りのタイミングでテストができていれば、確かにそこまで大騒ぎすることではありません。しかし今回は訳あって”全てが仕上がった後”のテストだったのです。つまり、みんなが苦労して仕上げたものが、引き渡し間際で水浸しになってしまったのです。
これには本当に悪い条件が重なっていました。2度と同じ事態にならないためにも、振り返りの意味も含めて、それらをまとめたいと思います。
2-1 テストが後回しになった
どの新築現場でも終盤はかなりバタつくものですが、この現場はそれが尋常ではありませんでした。テストなんかしてる暇があったら、1本でも配管を伸ばしたい、という状況だったのです。それでもテスト無しというわけにはいきませんから、引き渡し間近の少しだけ余裕が出たタイミングでのテストとなったのです。
つまり、水浸しになったのはスラブではなく、仕上がったタイルカーペットとその下のOAフロアだったのです。その後どのような”雑務”が待ち受けているかは、容易に想像できるかと思います。
2-2 周知不足
今回の現場では、私は”応援”の立場で、職長の方は経験年数は長いものの、皆からの信頼は薄い人でした。後から聞いた話によれば、満水テストをやるという報告を、朝礼後に下っ端監督へ簡単に伝えただけだったそうです。
結果的に他の監督さんが上階で水をバンバン流してしまい、テスト中の階は水浸しになりました。職長は下っ端監督に猛烈に文句を言っていましたが、冷静に考えれば、職長が朝礼時に他の監督や職人全員に周知をすべきです。
2-3 系統の把握不足
規模の大きな現場では、衛生設備1つとっても、監督や職人の誰しもが、1人で全てを把握することは不可能です。大まかに全体像が分かっていても、系統やバルブの位置などの情報量は膨大ですし、図面とルートが変わることも多いので、それらを1人ができるわけないのです。
テスト時には、それを十分に踏まえた上で、最新の図面や配管した職人と話し、実際に現場を見て系統を把握しておかなければなりません。今回は配管をした職人が現場におらず、更には上階の排水をひろっている竪管に、誤って「通気」という表示がされていたというお粗末なミスも重なりました。
3.必ず事前に確認すべきこと
満水テストについて、大まかな確認事項については以下のページにまとまっていますので、まずはご確認ください。
上記ページを見ると分かるように、確認すべきことはどれも当たり前の内容です。加えてもう少し補足すべき点をあげます。
3-1 水を止めておく方法による違い
水を止めておく方法はいくつかありますので、それぞれの特徴を簡単にまとめておきたいと思います。覚えておく必要はありませんが、状況に応じて最善の方法を選択しましょう。
3-1-1 満水治具
MD継手の「COS-T」にセットして使用します。蓋を取ってセットするだけですので、非常に簡単です。タイプにもよりますが、レバーをひねるだけで水を抜くことができます。ただ、抜けるスピードが遅いので、今回のよう上階で流されたことに気付いてから抜こうとしても、焼け石に水です。
3-1-2 ゴム風船
空気を入れるホースが届けば、どこにでもセットすることができます。配管内で風船を膨らませて水を止める原理です。空気を抜いた瞬間に凄まじい勢いで水が抜けますので、抜けた水が流れる場所や流れで風船が持って行かれないように注意が必要です。
3-1-3 CO・キャップ
稀な例ですが、横主管の末端にMD継手のCOで栓をしたり、DVキャップを糊付けしたりすることがあります。この場合、COならボルトナットを少しずつ緩めて水を抜き、DVキャップなら少し切れ目を入れて水を抜くなどの配慮が必要です。いずれにしても水抜きの始末が悪いので、採用することはほとんどないと思います。
3-2 上階まで配管が伸びている場合は更に注意
満水テストのタイミングとしては、1フロア配管が終わるごとがベストです。しかし、工程的にそううまく進む時ばかりではなく、上階の配管を先に伸ばすこともあります。そうなると、上階から水を流されるリスクが大きくなりますから、その分注意が必要だということです。
まとめ
今回は満水テストについて、1番あってはならない事故についてご紹介しました。ちょっとした気の緩みがまねく大惨事の、いい事例だったかと思います。
普通に作業していればほとんど起こらないようなことでも、100%はないのだと私自身実感しました。そして、いくら工程のキツい現場でも、職人同士や監督さんとのコミュニケーションが良好なら、こういった事故は起こらなかっただろうと思いました。
このページの内容を踏まえて、今後のより確実なテスト実施につなげて頂ければと思います。
初めまして。
この度、UボルトとUバンドについて調べております。
それぞれの特徴、用途、使い分けなど
教えていただきたいです。
お手数をおかけしますが
ご対応の程、宜しくお願い致します。
コメントありがとうございます。
UボルトとUバンド、ややこしいですよね。
まず、形状が異なっていまして、丸棒を曲げたような形状のものを「Uボルト」、平たい板状のものがU型に曲げたような形状のものを「Uバンド」と言います。
用途としては、Uボルトが鉄管やステンレスなどの”硬い”管用で、Uバンドが塩ビ管や耐火二層管のような”柔らかい”管用です。
Uボルトは、管に接する部分が少ないので、締付けによる集中的な力が加わります。
よって、鋼管などの重量物を支えやすい反面、塩ビ管などに使用すると、割れや歪みを生じやすいということになります。
その点、締付けによる力が”面”で加わるUバンドは柔らかい管に適しています。
とは言っても、絶対にどちらかを使わなければならないというわけではなく、鉄管用のUバンドもありますし、塩ビ管を仮にUボルトで固定するのもありです。
大体どのメーカーも〇〇管用という形で明記していますから、どちらに適しているかは分かってくるかと思います。
職人の私としては、どちらを使うにしても、とにかく締付け過ぎにだけは注意をしています。
よろしくお願いします。
お忙しいところ、ご返信ありがとうございます。
大変助かりました。
これからも記事楽しみにしていますね。