排水配管と切っても切れない関係の配管に「通気配管」があります。大規模な現場になると、通気配管だけでもかなりの物量になりますよね。
この通気配管については、排水配管ほどシビアに考えずに、そういうものだと思って配管している人が結構いるもの。恥ずかしながら、私も最初はよく分からず単に図面通りに配管していました。
また、改修工事では塩ビ管による通気配管が、ほとんどのり付け無しに挿さっているだけだった、なんてこともあります。
ですが、当然のことながら重要な役割を担う配管であり、しっかりと施工しなければなりません。
そこで今回は、通気配管について施工のポイントから通気が適切に確保されていないと、どういった現象が起きてしまうかについてもまとめていきたいと思います。
そもそも通気配管とは?
配管の中を排水が流れると、配管の中の空気が押し出されます。もしくは、空気が押し出された分、排水が通った後に空気が引っ張られます(サイホン作用という)。
この空気の動きに対応するために通気配管があります。
もし、まったく通気配管がなければ、簡潔に言うと「排水の流れがすこぶる悪くなる」ということ。
加えて様々な不具合が起こってきます。具体的な内容については、「3.通気が適切に確保されていないことによる現象」にてお伝えしますね。
通気配管の方式
通気配管にはいくつか方式があります。新築にしても改修にしても、多く採用されているのは「伸長通気方式」と「ループ通気方式」です。その他によく配管するのは、汚水槽や雑排槽の「槽通気」。
どのような方式を採用するかは設計する人が決めることですが、それぞれ必ず守らなければならない決まりがありますから、覚えておきましょう。
- 伸長通気の管径は、竪管径と同径以上
- ループ通気の取り出しは、末端の器具とその手前の器具の間
- ループ通気の竪管への合流高さは、同系統の器具で1番高いあふれ縁より150㎜以上
- 槽通気は他の通気配管と合流せず単独で外部に解放する
もし図面や監督の言っていることが上記に当てはまらない場合には、本当にそれで良いのか十分に確認しましょう。
通気配管時のポイント
ここでは、実際に通気配管をする際のポイントについてお伝えします。
まず大前提として、基本的な施工要領は、通気配管だからといって特別なことはありません。仕様として通気特有のものがありますので、それらを挙げていきます。
勾配をつけるのかゾロ(水平)にするのか
通気配管は水がまったく流れないかと言えば、そうではありません。結露や雨が吹き込んだ水などが流れるのです。
それもあってか、横引きは“教科書通り”だと少し勾配をつける(排水管に流れる方向)ようになっています。
ただ、実際の現場では水平で良いと言われることも多いです。どちらにするかは事前に確認しましょう。
チーズやエルボの取扱い(種類と向き)
排水配管は継手に大曲がりY(LY・TY)や大曲がりエルボ(LL)を使いますが、通気の取り出しや曲がりには、DT・STやDLを使うのが主流です。
また、継手の向きは「空気が昇っていく(水の流れとは逆)」として決定します。下写真のような使い方は通気でしかあり得ません。
※絶対にこのような使い方をするということではないので、事前に確認した方が無難です。
※曲がりが分かりやすいようにLT継手を例にしています。
取り出しで横取りはNG
どんなに配管場所か狭くても、取り出し角度は45度より上と決まっています。
これは配管のつまりや排水“戻り”などにより、空気の通りが悪くなるのを防ぐためと、空気に昇っていく習性があるためです。
ただし、この点に関しても実際の現場ではそうもいかないことがありますから、監督に確認した上で45度より下から取り出すこともあります。
絶対にやってはいけない”通気だから”という考え方
これは本当に1番大切なこと。
残念ながら私がこれまでに出会った職人さんの中にも、「通気だから少しくらい・・・」という考え方の人がいました。
排水が通らないのだから、ちょっとくらい失敗しても大丈夫という考えです。このような考え方は必ず事故につながりますので絶対にやめましょう。
通気が適切に確保されていないことによる現象
冒頭で通気配管が無いと流れが悪くなるという話しをしました。それ以外にもよく起こる不具合がありますので、具体的にご紹介します。
器具の封水が切れてしまう
洗面器や便器などの器具は、排水管の臭気が昇ってこないようにトラップがあり中が水で満たされています(封水)。
排水管の中が負圧になって空気が引っ張られると、この封水も引っ張られてしまい、最悪は封水が切れて臭気が昇ってきてしまうのです。
器具の排水口がボゴボゴいう
各種器具から水を流した時に、まず空気が押されて通気配管の中を抜けていきます。この抜け道が適切に確保されていないと、末端である各器具から空気が抜けようとします。
つまり、封水を押し上げながらボゴボゴと音を出しながら空気が出てきてしまうということ。
一般家庭でも、洗濯を排水すると流しからボゴボゴ音がすると、お客さんに言われることがあります。床転がし配管で伸長通気しか確保されていないため、空気が末端の器具から出てきているんですね。
この現象はひどい場合、排水口のフタがひっくり返るくらいのレベルになりることも。
我慢して使い続けられる人はまずいないので、何らかの改修が必要になってしまうのです。こういったケースもあるということを頭に入れておきましょう。
満水テストで通気配管から漏水
満水テストをする時には、排水管に加えて通気配管もしっかりと確認しなければなりません。
なぜなら、満水テストは各フロアの排水管が水で満たされるため、接続されている通気配管にも当然水が入るからです。
排水配管が漏れていないのに、水が減っていくからおかしいと思ったら通気配管が漏れていた、なんてことがありますので、くれぐれもテスト時には注意しましょう。
今回のまとめノート
通気配管は排水において重要な役割を果たしています。排水配管と違い、水がじゃんじゃん流れることはありませんが、だからといって絶対に手を抜くわけにはいきません。
この記事の内容を頭に入れておいていただければ、通気配管に関する大きな間違いは起きません。
ただし、管の径や分岐を取る場所など、設計的な部分は十分に監督に確認する必要がありますね。
使う道具や施工要領自体は排水配管と変わりませんので、通気配管特有のポイントだけ押さえておいていただければと思います。
では、良い配管工ライフを!
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