充電式インパクトドライバーと相性の悪い作業

ある日の休憩時間、60代の職人さんがこんな事をつぶやきました。「昔はインパクトなんてなかったから全部手でやってたもんなぁ、便利になったもんだ」青二才の私はこれを聞いて、そんなの絶対ムリ!どんだけ時間かかるんだよ・・・と思いました。しかし冷静に考えれば、私が配管工になってからもインパクトドライバーは日々進化しており、パワー・寿命・大きさなど使い勝手は良いですし、使わない日はないと言っても過言ではありません。

そんなスゴくお世話になっている便利なインパクトですが、何でもかんでも多用していると、たまに痛い目を見ることが分かってきました。つまり相性の悪い作業と言うものが存在するのです。中にはかすり傷程度では済まない大ダメージを受けることもありますから、ここでちょっと整理しておきたいと思います。

 メリットである力の強さが仇になる

インパクトの最大の利点はやはりそのスピードとパワーですね。ある程度の力が加わるとインパクトの名の通り、打撃を加えてより強く打込みや締付けができるわけです。しかしこの力の強さと打撃が逆に悪影響となるケースが、配管作業でも意外と多いのです。それを念頭にまとめていきます。

☑️便器や鏡など脆い器具の取付け

ご存知の通り陶器やガラスは脆いです。つまり便器や鏡の取付に際して、ビスを最後までインパクトで打ち込もうものなら間違い無く割れてしまうと思った方が良いです。例え強さを調整できるものを使っていたとしても、面倒くさがらずに最後は必ず手で締付けるのが基本中の基本です。

また、脱だからと言って気を抜いていると失敗するのが、ビスを外そうとしたのにインパクトが”正転”になっていて思いっきりガガガガっと打撃を加えて割ってしまう事です。回転方向が『逆転(L)』になっている事を確実に確認しましょう!

☑️アキレスやホースバンドの締付け

アキレスのバンドやホースバンドは薄い金属でできています。

六角になっているボルト部分を回す事で締付けますが、これをインパクトを使って普通の勢いで締付けると穴の開いている部分が歪んでバカになってしまいます。これも出来るだけ最後は手で締付けましょう。ちなみに手締めでも親の仇のごとく締付ければバカになりますから、そこら辺は調整です。

☑️金属板への穴開け

ステンレス製の流しやホーローの洗面台などに、配管を通したり蛇口を取り付けたりするために穴を開ける事があります。その際は超硬やバイメタルのホルソーを使うと思うのですが、出来ればインパクトではなくドリルドライバーを使いたいところです。

※超硬ホルソー

※バイメタルホルソー

ある程度力が強くなるとインパクトはどうしても打撃を与えますから、刃にダメージを与えるだけでなく鉄板の方も凹んでしまったりします。

☑️ビスやナットの締付け

木同士を締結したり支持金物のナットを締付けたりする分んには特に気を使わなくても良いと思います。ちょっと注意した方が良い作業を挙げてみます。

  • ノンプラグビスの付け外し
    開口部の仮塞ぎなど何度も付け外しがある場合、毎回インパクトでガチガチやっているとすぐにバカになります。
  • 細いビスやナットの締付け
    これは一番よくあるトラブルですね。頭がナメたり飛んでしまったり、ナットの締めすぎでボルトがちぎれたりしてしまうのです。細物のMDでは継手やフランジが割れることもあります。
  • サスのナットの締付け
    こちらもやはり打撃が関係していると思われますが、いわゆる「がじる(かじりつく)」というやつです。ボルトとナットが”くって”しまい、締めることも外すことも出来なくなる状態になってしまいます。

音は結構うるさい

インパクトのもう一つの難点は音が出ることでしょう。しかもあの打撃音は結構大きいので建物の外にいても響いてきます。平日の昼間も全く音が出せないなんて現場はまずないものの、夜間作業や隣家にクレーマーがいるなど音出しにシビアにならなければならないこともあり得ます。その際はドリルドライバーを使ったり、最悪は手作業になることも覚悟です。

どこまでが音出し作業?

まとめ

ということで、今回はインパクトドライバーと相性の悪い作業をまとめてみました。でも実はこれらの作業のほとんどはインパクトの回転力調整機能(ある場合)を使ったり慣れた方であれば微妙な指さばきでクリア出来るものです。やはりそこら辺は「職人」なわけですから、作業を最大限効率的に進めるためにも、これらの作業を頭に入れつつ多少はリスクを取りながら、インパクトさばきの腕を磨くのも良いのではないかと思います。少しでも作業の参考にして頂ければありがたいです。

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