マンションや団地の改修工事期間中に、よく「蛇口の交換」を依頼されることがあります。
蛇口の交換は、洗面化粧台や便器などの器具交換に比べれば簡単かもしれませんが、侮っていると思わぬ時間を要したり、漏水事故を起こしてしまったりする可能性もあります。一口に蛇口の交換といえども、その種類は多く以外に奥が深いものです。
そこで今回は、蛇口の交換を台付きの混合水栓・壁出しクランクタイプの混合水栓・洗濯水栓の3タイプに分けて、それぞれのポイントをまとめたいと思います。住戸の蛇口ではこの3タイプがほとんどですから、このページの内容を押さえておけば、ほとんどの蛇口交換に対応できます。
メーターから水を止めることについて
本題に入る前に、このページにも頻繁に出てくる「メーターから水を止める」ことについて説明しておきます。水を止める(~水出し)際は以下の手順で行いましょう。
- お客さんに水を止めることを伝えます。自分の家ならいりません。
- メーターのバルブを完全に閉めます。
- 洗面・トイレ・お風呂・流しなど、全ての蛇口を開けて残り水を抜きましょう。
- 蛇口交換などの作業
- 全ての蛇口(止水栓)が閉まっていることを確認します。
- メーターのバルブをゆっくり開けて羽車が止まることを確認します。
- 全ての蛇口(止水栓)を開けて、エアーやサビなどが出なくなるまで水を流します。
- 何も問題がなければお客さんに水が使えることを伝えて終了です。
1.台付き混合水栓(洗面台・流し)
台付きというのは、洗面台や流しに使用される、土台の上に注ぎ口が付いているような形の水栓です。
洗面台用 台付き水栓
流し用 台付き水栓
この台付きは、給水と給湯接続用の平行ねじ(13㎜)がついており、そこにフレキなどで接続します。ではポイントを見ていきましょう。
1-1 水は止める必要なし
台付き水栓は、本体の平行ねじと止水栓をフレキなどで接続するのが基本です。ということは、メーターから水を止める必要はなく、止水栓を閉めて作業すれば良いです。
※止水栓がない場合(効かない場合)
もし止水栓がない場合や効かない場合には、メーターから水を止める必要があります。外した接続箇所から抜けきっていない水が出てきますから、ウエスやペットシートを用意しておきましょう。
1-2 必要な道具
フレキなどの袋ナットを回すためのモンキーレンチ、止水栓を操作するマイナスドライバーの他に、「立水栓締付工具(エル型レンチ)」は必須です。なぜなら、下部のナットが器具の奥まった箇所や狭いところにあるため、回すにはモンキーなどの工具が入らないからです。
立水栓締付工具
また、溜り水が出るので、水受けやウエスは用意しておくべきです。ペットシートもかなり使い勝手が良いのでオススメです。
1-3 パッキンの用意
古い蛇口の交換時には、パッキンの劣化が予想されます。フレキなどの接続に使用される13㎜の平パッキンは用意しておいた方が良いでしょう。
1-4 流しについての特殊なこと
流しに関しは、洗面台と違い少し手間がかかるケースもあるので、簡単に触れておきます。
1-4-1 接続が点検口の中後ろのケース
流しの台付き水栓は、水切り部分に付いていることが多いため、流しの背壁の裏側で接続されていることがほとんどです。
この場合、点検口があればそこから、なければ自分で開口し、作業後に同じ色の化粧ベニヤでふさぐなどの処理が必要となります。
1-4-2 新たに穴を開ける場合
水切り部分や天板のステンレスに対して新たに穴を開け、そこに台付き水栓を取付けるケースがあります。その際の穴開けについて、特にお伝えしておきたいのは1点です。
それは、ステンレスに対応したホルソーを使うことです。ステンレスは板状でも意外に硬いので、ステンレス用でないとすぐに刃が欠けたり焼けてしまったりします。
1-4-3 ワンホールタイプの蛇口
最近のシステムキッチンにも多く採用されているのが、ワンホールタイプの台付き水栓です。立水栓締付工具がなくても簡単に取付けられるものがほとんどです。
湯水の接続はホースになっているので、洗面台と同様に止水栓に接続する形になります。
2.壁出しのクランクタイプ
給水・給湯が壁から出ている場合の、クランク付き混合水栓です。
シャワー水栓や在来の流しに多く使用されています。配管と止水栓を通さずに接続されているため、台付き水栓と比べると少し面倒です。
2-1 水を止める必要あり
この形は必ずメーターから水を止める必要があります。それはクランク部分が止水栓になっているからです。クランク部分を外す際は、必ずメーターから水を止めて作業を行いましょう。
2-2 必要な道具
モンキーレンチやマイナスドライバーの他に、イギリス(モーターレンチ)があった方が良いです。
これはクランク部分をねじ込む際に、できるだけ本体を傷つけないようにするためです。モンキーなどで回すと結構な傷がついてしまう場合があります。
加えてねじ込みに使うヘルメ・シール、そして最後に本体の水平を見るための水平器があると良いですね。
2-3 クランクに湯水の区別がある場合
クランクは同じものが2つのように見えて、実は湯水が区別されている場合があります。よく見るとお湯の方には「熱くなるので注意!」のようなシールが貼ってあります。くれぐれも逆に取付けないよう注意してください。
3.洗濯水栓
ここで対象とするのは、水のみの単水栓です。湯水混合栓の場合は、「2.壁出しのクランクタイプ」を参照してください。
今回取り上げる3つの中では1番簡単かと思います。
3-1 水を止める必要あり
洗濯水栓もメーターから水を止める必要があります。洗濯機との接続ホースを外す際に、蛇口が開いていて水浸しになることがありますから、まずは水を止めてしまった方が無難です。
3-2 必要な道具
基本的には本体を傷つけないためのイギリスと、ねじ込みのためのヘルメ・シールがあれば大丈夫です。もちろんウエスやペットシートはあった方が良いですね。
3-3 洗濯機の収まりに注意
交換作業自体は比較的簡単でも、洗濯機が収まらなくなるというトラブルに見舞われることもあります。例えば、万能フォームで高さギリギリ収まっていたものを、最初の写真のような形状に交換したことによりぶつかってしまったり、給水ホースが折れてしまったりするケースです。
ですから、必ず事前に寸法を測って収まりを確認しましょう。もし収まっても位置が変わったり、向きが変わったりする場合は、事前にお客さんに了解を得た方が良いでしょう。
まとめ
蛇口の交換は、しっかりと道具や消耗品を揃え、このページにあるポイントを押さえておけば、難なくこなせると思います。手順は多くないですが、器具付けの基本とも言える作業ですから、確実に身につけたいところです。
なお、新しい蛇口のには必ず「施工説明書」が入っています。施工説明書は“職人でなくても”取付けができるくらい分かりやすいですから、必ず目を通すことをお勧めします。
施工説明書、このページのポイント、以上2点を押さえておけば、まず大事故になることはありません。ぜひ作業の参考にして頂ければありがたいです。
コメントを残す