便器の脱着は配管工にはつきものですよね。改修工事で1日に10台以上の便器を脱着しなければならないこともあります。
私もこれまでに数えきれないほどの便器を脱着してきましたが、最初はとても時間がかかりましたし、失敗もしてきました。
そして経験を重ねるうちに、ある一定の手順やコツが確立されてきました。今回はそれをまとめてご紹介します。
自信を持ってお伝えできる内容ですから、ぜひ今後の脱着作業に活かしていただければと思います。
※念のため補足しておきますが、今回対象とする便器は、一般家庭にある便器です。小便器や共用トイレにあるようなタイプは含みません。
1.手順のおさらい
住戸に取付けられている便器は、ロータンク式・タンクレス式・タンクウォシュレット一体型など様々です。それでも手順としてはほとんど変わりません。
さらに、新規の便器を取付ける以外は、脱の逆が着の手順となりますから、ここでは便器を外す手順をおさらいします。
①止水栓を閉める
特に問題ないかと思います。回らない、または効かない場合は、メーターから水を止めましょう。
ポイントキャップナットを用意しておけば、止水してその後またメーターを開けられます。
②流す(止水の確認)
この時点で給水されないことを確認します。
ポイントできるだけ水を流しきるために、レバーを数秒上げっぱなしにしておきましょう。
③タンクのフタを取る(ある場合)
タンクのフタが取れる場合は取っておきます。中を覗いて残り水がないか、ペットボトルなどが入っていないかを確認します。
④ウォシュレットを外す(ある場合)
この時点でウォシュレットを外します。ウォームレットの場合も外した方が良いですが、普通便座の時は外さなくて良いです。
⑤タンクを外す
タンクを本体から外したら、まずは残り水を本体の方に流してしまいましょう。
ポイントウォシュレット一体型でフタが取れない場合は、どこかに水抜きが付いているはずです。分からなければ前後左右に傾けて見て、水が出れば本体に流しましょう。それでも水が抜けなければ、ウエスを何枚か重ねてその上にタンクを置いておきましょう。
⑥本体を外す
溜まっている水をシュポコンとバケツで抜いてから外します。
ポイントもしシュポコンを用意できなければ、ウエスやペットシートなどで吸い取りましょう。
⑦ガスケットを外しビスなど養生
Sタイプはガスケットを外し、ビス類を養生(またはビス穴に挿す)しておきます。
ポイントガスケットはマイナスドライバーなどを水で濡らしながら使うと剥がしやすいです。リモデルタイプは排便管部分を外す必要があるか確認しましょう。
2.より速くするために
便器の脱着は、場数をこなせば徐々に速くなっていくとは思います。それ以外にも、ちょっとした工夫や道具を使うことで速くなりますので、いくつかご紹介します。
意外と使えるバンドラチェット
マイナスドライバーやモンキーレンチなど必須の手工具以外に、バンドラチェット(13㎜×10㎜+12㎜)があると便利です。
フランジのTボルトは13㎜のナットですし、便器を固定しているボルトは10㎜が多いです。またタンクのナットは12㎜なので柄の部分が使えます。
インパクト+10㎜のボックス(ユニバーサル)を使う
便器本体を固定しているボルト(10㎜)を外す(または入れる)時に使います。
便器本体が邪魔になるのでユニバーサルが良いです。入れる時は最後までインパクトで締めると割れてしまうので注意しましょう。
タンク(ウォシュレット)ごと外す
これはかなりの荒技なので自信を持ってお勧めはできませんが、とてつもなく速いです。
便器本体とタンクが付いた状態で一気に外すということです。とにかくバランスが悪く重たいので、運ぶ時に注意が必要です。
タンクを外したり残り水を捨てたりする手順が無いので、その分速くなります。もちろん、密結部からの漏水リスクも減りますね。
パッキンが古ければ変えておく
便器周りには色々とパッキンが使われています。古いパッキンは一旦外すと、取付時に漏れる可能性が高いです。劣化がヒドい場合には、最初から変えてしまった方が、取付け時の漏水による二度手間が防げます。
3.やってしまいがちな失敗
どんなに腕の良い職人でも失敗はします。便器の脱着についてもついついやってしまいがちな失敗がありますので、いくつか挙げておきたいと思います。
縁が切れている配管に水を流してしまう
改修工事では竪管更新に伴って便器を脱着するケースもあります。この時に縁が切れている配管に流してしまうことがあります。
竪管が撤去された後に流してしまったり、新規配管が接続される前に流してしまったりするわけです。
タンクや本体を割ってしまう
運搬時に落としてしまうことは稀ですが、ビス周りが割れることが多いです。例えばインパクトで最後まで締め付けたり、段差がある状態で締め付けてしまったりすると割れます。
陶器を時計などで傷つける
腕時計やスマホホルダーなどの金属部と陶器の相性は悪く、ちょっと擦ると簡単に落とせないキズ(金属の塗装)がついてしまいます。できるだけ外して作業しましょう。
付属品を失くす
失くすものとしては、ビスが代表的です。それ以外にも便器によっては細かい部品がたくさんありますから、しっかりと養生しましょう。
隠蔽配管を傷付ける
便器を外す時に、リモデルの排便管がコーキングで止めてあったり、ボルトが片方しか止めてなかったりすることがあります。
これを戻す時には「現状復旧」した方が良いです。つまり気を利かせて新しくビスを打たないということです。
なぜなら、100%ではありませんが、何か理由があってそうなっていると推測されるからです。(例えばちょうど配管にぶつかるなど)私もこれまでに、気を利かせてビスを打ったら給水管を突っついたということがありますので。
今回のまとめノート
便器は器具の中でも脱着することが多いものです。お客様が使用しているケースがほとんどですので、作業では慎重さと速さが求められます。(復旧できなければお客様が用を足せない)
ポイントを押さえて適切な手順での脱着を繰り返せば、徐々にスピードはあがり、ご自身ならではの小ワザみたいなものも確立されていくと思います。
この記事内で参考になるものがあれば、どんどん日々の作業に取り入れていってくださいね!
では、良い配管工ライフを!
コメントを残す