新築工事ではたくさんの他職の職人さんたちと絡みますよね。規模が大きくなったり、建物が特殊だったりすれば、その職種はさらに多くなります。
他職の職人さんたちとの絡みはとても重要で、天候や材料の段取りなどと同様に、工程に大きな影響を与えます。
それは、配管を先に逃げておかないと後からでは不可能な箇所や、先にやってしまうと他職種の邪魔になってしまうような箇所があるからです。
むしろ実際の現場ではほとんどがそのような箇所で、他職の職人さんとの取り合いをいかにうまくやりくりできるかが、現場をスムーズに進める鍵になってきます。
そこで今回は、新築工事で配管を進めていく上で、どのようなタイミングでどのような職種との絡みがあるか、そしてそれぞれのポイントについてまとめます。
ありとあらゆる職種についてですから長くなりますが、ぜひ確認いただいて日々の作業に活かしてください!
配筋・型枠屋さん
現場が始まって最初に本格的に他職の人と絡むのは、スリーブ・インサート入れではないでしょうか。
タイミングや作業の範囲
スリーブ・インサート共に、配筋後かラップするのか配筋前かは現場によって違ってきます。また、墨出しやスリーブ周りの補強筋を自分で入れるのかなども時と場合によるでしょう。どのタイミングでどこまでやるか、事前の確認が必須です。
そしてコンクリートを打つ際には、合番でスリーブが倒されたり養生を剥がされたりしないようにしなければなりません。
型枠がバレたら
スラブにデッキを使用していないケースでは、コンクリートを打った時に型枠(支保工)で支えられています。配管など他の作業ができるのは、当然その型枠がバレた後になります。
スリーブがボイドで入っている場合には、まずボイド抜きがメインの仕事となります。
左官屋さん
よく考えてみると、以外に絡みが多いのが左官屋さんです。特によくある絡みを挙げます。
- メーターシャフトのシンダーコン前の逃げ配管
- 厨房シンダー内配管(逃げと合番)
- 壁貫通、スラブ貫通部の穴埋め(左官仕上げありなら少し凹ましておく)
- 直天井や直壁の場合はサンダーがけや仕上げが先
建物としてはマンションや都営住宅などが、直接の絡みは多いかと思います。
その他、補修や仕上げがいたるところで発生しますから、そういった箇所を傷付けないことや立入禁止箇所に気を配る必要があります。
軽量屋さん
最も絡みの多い職種の中の1つです。
間仕切り
間仕切りを立てられてしまうと、高所作業車が入れなくなったり伸び馬が立てられなくなる箇所が、現場には多々あります(特にシャフト周り)。大手の現場では脚立やハシゴは使用できませんから、なおさら先に逃げておく配管には気を配っておかなければなりません。
ただ、ライナーに入っているだけのスタッドを寄せれば、逆側(広い方)から配管できることもありますから、その辺りは見極めが必要です。
壁貫通箇所
配管が壁を貫通する箇所はスタッドを避けてもらわなければなりません。特に貫通部はボードを貼った後が多く、動かしようがないため切断することになってしまうからです。そうなると、切断の手間がかかるのは当然、壁の強度も弱くなってしまって何も良いことはありません。
墨はレベル・太さ・管種が分かるように以下のように出します。
ライニング
トイレには巻き出し配管用のスペースとしてライニングが設けられることが多いですよね。
理想としては、巻き出し配管後にライニング下地をやってもらい、その後末端を固定する流れです。
特に壁掛け型便器のスタンドは必ず最初にやっておかなければなりません。
実際には下地の後に配管をすることも多いですから、軽量を切断したり穴を開けたりする作業が発生します。ホルソーやサンダーが必要になるということですね。
器具の下地
壁に衛生器具を取付ける箇所には下地が必要です。
戸建てや小規模な建物ではボードの代わりにコンパネを貼って下地とするケースが多いですが、大手では軽量下地に鉄板です。
下地の墨を誰が出すかは別として、小便器やSKは下地が入っていなければどうしようもありませんから、確実に入れてもらわなければなりません。
ボード屋さん
軽量屋さんと並んで絡みが多いのがボード屋さんです。ボードは石膏ボードとは限らず、ケイカルやフレキのケースもあります。
間仕切り
軽量下地が立った時点で高所作業車は通れませんが、スタッドの隙間を行き来したりスタッドを寄せて作業したりできますが、ボードが貼られると完全に壁になりますから、それもできなくなります。
ですから、軽量の時よりもシビアに“塞がれたら配管できない”箇所を確認しておきましょう。
壁貫通箇所
基本的にはボードを貼った後に配管を貫通させますが、先に通しておかないと後からできない箇所や、行程的にボードを待っていたら終わらない場合は先に通してしまいます。
中には、ボード屋さんを呼んできて貫通部分だけ貼ってもらうなんてケースもありますね。
また、いくつか壁のパターン別に判断した方が良いので具体例を挙げておきます。
- 通常の2枚貼り(1枚目ビスで2枚目タッカー)
- 防火区画壁(スラブ間を全て塞ぐ)
- 防煙壁(1枚目のみ天井スラブまで貼りあげ)
- 遮音壁(間にグラスウールが入っている)
- 1枚貼り(シャフトの内側など)
これらをよく確認して配管のタイミングを見極めましょう。
ライニング
巻き出し配管の後にボード面よりヤトイを出したおくことで、ボード屋さんが穴を開けて貼ってくれます。ヤトイを出してない場合には指摘してくれるボード屋さんもいますが、そのまま隠蔽されることも多いので、それだけは確実にやりましょう。
壁内の隠蔽配管も同じです。
塗装屋さん
塗装屋さんと1番絡みがあるのは露出配管です。なぜなら露出配管は塗装仕上げになることが多いからです。塗装仕上げになる場合のポイントを挙げておきます。
- ねじ込み配管のシールテープが見えていると、塗装がのりにくい
- 固まったヘルメやシールテープは取り除いておく
- 支持金物を塗装しない場合は、できるだけ外しておく
- 塗装屋さんに渡す前に配管を完全に終わらせておく
特に最後は重要で、なんらかの理由により一部配管が中途半端になる時は確実に伝達しておかなければなりません。例えばMD継手のナットを塗装完了後に緩めたり締めたりすれば、間違いなく塗装は剥がれます。
他にもこんな面白いこともあり得ます。クロス屋さんが落としたパテもろとも一緒に塗装されてます・・・
マキベエ・耐火被覆
作業の順序
マキベエや耐火被覆は躯体に巻きつけ(吹きつけ)ますよね。なので、コンクリートを打ち終わった後の順序としては配管より先になります。
行程的にどうしても先に配管となる場合は、鉄骨に近い箇所(高所作業車が昇る範囲)は抜かして配管し、マスカーなどで養生(耐火被覆の場合)しておかなければなりません。
それぞれ特有の注意事項
マキベエと耐火被覆は、用途が同じでもそれぞれに対する注意事項は異なってきます。
【耐火被覆】
耐火被覆はご存知の通り、衝撃を与えるとボロボロと落ちてしまいます。ですから、まずは付近で作業する際は配管や体が当たって崩してしまわないよう注意します。
また、乾いた後には少し触れただけでも飛散しますから、マスクの着用は必須です。石綿と比較してしまうと害は微量ですが、大量に吸い込むのは危険ですし、咳が出て喉を痛めるなどの症状が出ることもあります。
【マキベエ】
耐火被覆のようにボロボロと落ちることはありませんが、配管の先端が当たったり高所作業車でこすったりすれば当然破れてしまいます。
1番注意したいのは配管の貫通です。穴はできるだけ小さく開け、広がりすぎた穴はテープやシール材で補修する必要があります。
SD屋さん
直接の絡みはほとんどありませんが、軽量下地だけの時に高所作業車で通れていた箇所が、SD枠が取付けられたことで通れなくなることがあります。これは幅的な問題もありますし、下部をモルタル埋めされることによる養生期間の影響もあります。
SDは結構早い段階で入ってきますから、配管量が多い部屋や出入口の間口が狭い部屋は、気を付けた方が良いですね。
防水屋さん
屋上や厨房配管床面がなんらかの防水処理されます。アスファルト防水や塗膜防水などです。
防水面への配管貫通部
まず関係するのは配管が貫通する箇所です。当然、貫通部から水(雨水や床を洗う水)が伝うことは許されませんから、防水を配管に巻き上げてもらうなどの処理が必要です。
つまり、防水処理の前に配管を終わらせておく、そしてモルタルによる穴埋めはできる限りキレイに仕上げて渡してあげると親切です。
支持金物
防水面への支持はアンカーやビスを打つことはできませんから、コーキングで貼り付けたり単純に置くだけの支持となります。
空調・電気・ガス・厨房・その他設備関連
空調屋さんや電気屋さんは同じ“設備”関連ですから、どの現場でも仲間意識は強いかと思います。
天井内やシャフト内に配管・ダクト・ラック・配線・設備機器など、すごい物量が収まるわけですから、その順序は非常に重要となってきます。
空調や電気関係
原則として天井ならレベルが高いものから吊り、シャフトなら壁に近い細ものから立てていきます。
やはりネックとなるのは大物である角ダクトや幅の広い電気のラック、250φ以上の冷温水配管などですね。
もし後からその上の配管をやらなければならなくなったら、本来はやるべきではないですが、高所作業車の手すりやダクトに乗っての作業となることもあり得ます。
逆にそれよりレベルが低い配管だったとしても、アンカーを打てなくなることもありますから、できれば最初に打っておくのが理想です。
厨房屋さん
厨房配管はで重要なのは、「どこまでやって引き渡すか」です。
厨房機器との接続は厨房屋さんがやることが多いですし、口どりをしてバルブまでということもあります。いずれにしても、事前に引き渡し条件を確認しておきましょう。
鳶さん(足場)
大規模な現場では階高が5m以上なんてこともザラですから、外部だけでなく内部にも足場を組んでもらうことも多いです。
配管のための足場なら配管ルートの邪魔にならないように組んでもらうことが重要です。それ以外の足場なら、必ずと言ってよいほど配管の邪魔になることがありますので、その際にどれだけ迅速に組み替えやバラしをやってもらえるかがカギとなります。
また、足場がバラされたら困る作業を、足場があるうちに確実に終わらせておくことも大事です。
ちなみに、もし自分で足場の一部をバラしたら、配管後に必ず元に戻すか、戻せなければ報告しましょう。
重量鳶さん
ポンプや大型の給湯器など、設備機器の荷揚げや据付をやってくれます。
据付に関しては私たち配管工が直接指示を出すことはまずないと思います。直接影響してくるとすれば、大型の機器や受水槽のパネルなどを荷揚げした際の「置き場所」です。
機器周りの配管をするのに、できるだけ邪魔にならない(動かしやすい)位置に置いてもらうことが理想です。
内装関係(シール屋さん・クロス・CF屋さん・パネル屋さん)
内装関係の職人さんと絡みが出てくるのは、主に器具付け前後ですね。
便器や洗面器などの器具は、クロスや巾木などの内装関係が終わってから取付けるのが基本です。
ただし、工程的に待っていられないケースもありますから、そんな時は”絶対に後からでは無理”な箇所以外は、内装屋さんに涙を飲んでもらい先に取付けることも必要です。
今回のまとめノート
いかがでしたでしょうか。今回は建築関連の職種を中心に、私たち配管工が絡みのある内容をまとめました。
新築工事では、毎日何かと他職の職人さんとの絡みがあります。事前に確認できる部分はしっかりと打ち合わせをし、作業がラップしたり急な逃げが発生したりしても、柔軟に対応したいところです。
この記事の内容を参考にどのような絡みがあるかを頭に入れておけば、忙しい現場でも優先順位を決めて作業することができ、他職との衝突も最小限にできます。
もちろん、すべて覚えることはありませんので、必要な部分をかいつまんで作業に活かしていただければと思います。
なお、今後新たな発見があれば、職種や内容を追記していく予定です。
では、良い配管工ライフを!
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