厚肉ステンレス管のねじ込み配管で最初に確認すべき3点

厚肉ステンレス鋼管のねじ込み配管をやったことがあるでしょうか?

食品工場などでは、腐食や熱に強い厚肉のステンレス鋼管がよく採用されています。

ステンレス鋼管といっても、加工から配管まで一通りの手順は、白ガス管やVB管とほとんど変わりません。ただ、管の性質上、最初に確認しておくべきことがあります。

それが以下の3点です。

  1. バンドソーの刃をステンレス鋼管用にする
  2. 旋盤のチェーザをステンレス鋼管用にしネジ調整する
  3. ステンレス鋼管用のヘルメシールを使う

これらは、実際の現場では、ステンレス鋼管のねじ込み配管をすると分かった時点で、事前に段取っておくことが理想です。ではそれぞれ見ていきましょう。

1.バンドソーの刃はステンレス鋼管用を使う

ステンレス管は、白ガス管やVB管に比べると硬いです。よって、バンドソーの刃を“ステンレス鋼管用”にしておく必要があります。

一般鋼用の刃でも絶対に切れないということはないですが、すぐに刃が焼ける(なくなる)か断裂してしまいます。逆にステンレス鋼管用の刃であれば、一般鋼もなんら問題なく切断できますので、基本的にはステンレス鋼管用の刃を使った方が良いと思います。

ただし、コスト的にはステンレス鋼管用の方が当然高いですから、その辺りは意見が分かれるところです。

具体的な金額で言うと、2割~5割増しくらいかと思いますが、お勧めは常にステンレス用の刃を使うことです。

なぜなら、管種に関わらず、支持金物はサスを使うこともありますし、ナイスジョイントなどで薄肉ステンレス鋼管を加工することもあるからです。切るものによっていちいち刃を交換するのは、かなり面倒です。

2.旋盤のチェーザとネジ調整ステンレス鋼管に合わせる

管を切断したら、次はねじ切りですね。旋盤によりねじを切るわけですが、その際の刃、つまりチェーザもステンレス鋼管用にしておかなければなりません。

もし一般鋼管用のチェーザでステンレス鋼管のねじを切ると、切れないことはないですが、極端に寿命が短くなるようです。(以下を参照)

ねじ切り時間を短くするため、回転数を上げてねじを切ったり、鋼管用チェーザでステンレス鋼管にねじを切ると(10口くらいしか切れません)チェーザ寿命は著しく短くなります。

ステンレス鋼管用チェーザの寿命は、ステンレス用ねじ切りオイルを使用した場合、鋼管用チェーザに比べて、約1/3になります。

出典:REX 「チェーザの寿命はどれくらいですか?交換の目安は?」

ステンレス鋼管用チェーザの見分け方

チェーザは、一般鋼管用とステンレス鋼管用の区別がつきにくいです。そこで、代表的な2メーカー(REXとAsada)について、見分け方をお伝えしておきます。

REX製のチェーザは、ステンレス鋼管用に「HSS」の刻印がされています

出典:REX 「ステンレス用チェーザと鉄用(鋼管用)チェーザの見分け方は?」

Asada製のチェーザは、ステンレス鋼管用に「SKH」または「HSS」の刻印がされています

出典:Asada 「配管機器・工具カタログ」

ステンレス用のねじ切りオイル

ねじ切り用のオイルについても、ステンレス鋼管用があります。チェーザの寿命を最大限にするには、可能な限り使い分けたいところではあります。

しかしながら、実際の現場では「VB管だけ」とか「ステンレス鋼管だけ」ということは少なく、複数の管種を加工しなければならず、チェーザの交換だけでも精一杯でしょう。(オイルを抜いて入れ替えるのはかなり面倒なのです)

事実、私の周りの職人でそこまで意識している人は誰もいません。”可能な限り”ということで認識しておきましょう。

3.ステンレス鋼管用のヘルメシールを使う

しつこくて申し訳ないのですが、ステンレス鋼管は硬いです。この“硬い”というのは実は結構くせ者で、ねじ込みが急に止まってしまい回らなくなったり、ねじがかじりついたりする原因となります

そんなステンレス管のねじ込みには、やはり専用のシール剤を使いましょう。最もよく使うのは、「ヘルメシール903」でしょう(上写真)。色は白に近く、固まりにくい性質があります。

ヘルメシール55(下写真)のようにフタを閉め忘れたからといって、カチカチに固まることはありません。

シール剤が専用でも、施工の手順的には白ガス管やVB管と変わりません。ただ、手に着くと固まらない性質のせいか、ベタベタとまとわりついてなかなか落ちませんから、手袋は必須です

過去に素手で1日中ステンレス管のねじ込みをやったときに、手のひらがまるで墨汁で遊んだかのように真っ黒になってしまったことを憶えています。

今回のまとめノート?

厚肉ステンレス鋼管のねじ込み配管は、白ガス管やVB管と施工手順は変わりません。ただし、管の性質上(硬い)以下の3点は、施工前に必ず確認して段取っておきましょう。

  1. バンドソーの刃をステンレス鋼管用にする
  2. 旋盤のチェーザをステンレス鋼管用にしネジ調整する
  3. ステンレス管用のヘルメシールを使う

バンドソーの刃やチェーザは一般鋼管用でも切れないことはありませんが、刃の寿命が極端に短くなりますから、結果的には割高になるでしょう。この辺りはケチらずに、ステンレス鋼管用を用意した方が良いですね。

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3 件のコメント

  • はじめまして。いつも有益な情報をありがとうございます。
    ヘルメ903を使用時はプライマー塗布してらっしゃますか?
    サス管施工時のシール材を色々と使用検討しているんですがイマイチしっくりこない現状です(汗)
    プライマー使用無しで検討しているんですが…65A~口径が大きくなると不安です。

  • はじめまして。いつも有益な情報をありがとうございます。
    サス管使用時ヘルメ903はプライマー使用してますか?
    サス管のシール材を以前から試行錯誤していまして、プライマー無しの物を検討しているんですが…65Aぐらいから口径が上がってくると不安です(汗)

    • disさん、コメントをありがとうございます。

      そして、非常に久しぶりにブログを見たら、1ヶ月以上前のコメントでしたね・・・
      申し訳ありませんでした。

      さて、サス管のねじ込み配管ということですが、私も903を使用しています。
      サス管のねじこみ自体はよく施工するのですが、正直なところ細物ばかりです。
      これまでのところ、漏水は1度しかなく、それも原因はネジ不良でした。

      確かに65A以上となると不安も増しますが、903は大口径にも対応しているので問題ないかと。
      曖昧な回答となってしまい申し訳ありませんが、どちらかと言うとネジのできの方が重要な気はします。

      以上となります。
      よろしくお願い致します。

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